学会活動

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第11回OpenFOAM国際ワークショップ(OFW11)に参加して

大気・海洋環境領域 主任研究員
小野 浩己

1.International OpenFOAM Workshopの概要

 コンピュータを利用して空気や水など様々な流体の挙動を解析する「数値流体力学(Computational Fluid Dynamics, CFD)」という分野はコンピュータの発達とともに急速に発展・高度化しており、今では基礎研究のみならず、自動車・建築・プラントなど様々な分野で産業に欠かせない存在となっている。そのCFDを行うためのソフトウェアの一つがOpenFOAMである。OpenFOAMの最大の特徴は、その計算コードの全てがオープンソース、すなわち、コードの閲覧・改変・再配布が自由に出来るというところにある。これによって、商用ソフトウェアに負けない豊富な機能を標準で搭載しながらも、それぞれのユーザーがニーズに応じて自由にカスタマイズできるという柔軟性を兼ね備え、世界中で普及が進んでいる。現在、当所でもOpenFOAMをベースとした次世代の大気拡散モデルの開発を進めており、産業応用やカスタマイズ等に関する情報を収集し、今後のOpenFOAMの動向を調査することは、モデル開発を進める上で有益と考えられる。
 報告者は2016年6月26日から30日まで、ポルトガルのギマランイスで開催された標記ワークショップに初めて参加した。本会議は、世界中のOpenFOAMユーザー・開発者などが、それぞれの専門の枠を超えて議論を交わす国際会議である。2006年から毎年開催されており、11回目の今回は300人近い参加者があった。

2.セッション

 いわゆる通常の学術会議と異なる点は、参加者全員が共通のソフトウェアプラットフォームを持っていることである。そのため、研究発表だけではなく、開発者による新機能の紹介・デモンストレーションや、Hands-on形式でのトレーニングなど、様々な形態のセッションが催され、いずれも盛況であった。また、発表件数の倍以上の参加者がおり、多くの人たちは情報収集や交流拡大の場として活用していた。これもコミュニティベースでの開発が進むオープンソースソフトウェアならではといえるだろう。
 当然ながら発表内容のほとんどはOpenFOAMに関することであったが、OpenFOAMがカスタマイズ容易なCFDライブラリであるという側面からか、CFDそのものの基礎・応用理論などを扱った発表も複数みられたのが印象的であった。
 報告者は「建物周辺の乱流計算手法(LES, Large Eddy Simulation)のための流入風データ再利用手法に関して」という内容でポスター発表を行った。単純建物からの汚染質拡散LESを行う際、計算負荷の削減や気流条件のばらつきを無くすことを目的として非定常流入風データの保存・再利用を行う場合がある。その際、適切なデータ保存および補間がなされていないと計算負荷が増大する他、精度の低下につながることがある。本報告は、OpenFOAMを用いて適切なデータ保存・補間方法を開発し、検証したものである。ポスターセッション中には、Bruno Santos氏 (blueCAPE社、ポルトガル) をはじめとしたOpenFOAM分野で有名な方々と、本手法で生じた速度低下の要因や、気象モデルとの結合の可能性等に関して議論できた。

図1 CFDで利用される計算格子をモチーフに作成されたOFW11のロゴ
参加者が会期中に思い思いにスプレーでペイントしていた(右上は初日開会前の様子)。

3.ギマランイス

  今回開催地として選ばれたギマランイスはポルトガルの北部に位置する歴史地区であり、ポルトガル第2の都市ポルトから電車で約1時間の距離にある。ギマランイスは、ポルトガル王国の初代国王アフォンソ1世の生誕の地であり、かつ建国時の首都として経済的にも発展を遂げる。現在でも中心部はその頃の中世の町並みが残されており、旧市街全体が世界遺産となっている。到着した日はお祭りが開催されて街中に音楽が流れており、子供の頃よく遊んだテレビゲーム「ゼルダの伝説」の世界に迷い込んだかのようであった。
 会議中の夕食の機会は公式3回、非公式1回と通常の国際会議に比べると多く、様々な人と交流するきっかけとなった。ブラジルのManoel氏やアイルランドのRudolf氏らとはOpenFOAMの細かい話はもちろんのこと、リオオリンピックやUKのEU離脱の話題で盛り上がり、デンマークのIvar氏とは「新しいことを学ぶためには?」といった話題から始まり、日本人の国民性についても雑談をした。
 ポルトガルの食事は、鰯・タコ・鱈などの海産物とオリーブオイルをふんだんに使用したものが多く、日本人の味覚にもなじみやすく美味しいものばかりであった。特にワインについては、伝統のポルトワイン(ポートワイン)から若飲み用のヴィーニョ・ヴェルデ(直訳すると”緑のワイン”。微発泡ですっきりしていて飲みやすい)まで豊富であり、料理と合わせて楽しむことが出来た。

図2 ギマランイス旧市街地の入り口
壁には「ポルトガル、ここに誕生す」と記されている。

©2016 電力中央研究所

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