学会活動

学会活動

第3回アジア・太平洋国際微生物電気化学技術学会(The 3rd AP-ISMET)に参加して

環境化学領域 上席研究員
松本 伯夫

1.AP-ISMETの概要

 AP-ISMETは、アジア・太平洋地域の国々において、微生物電気化学に従事する研究者の討論の場となっている学会であり、今年で第3回目を数える。今回は韓国釜山のBusan Exhibition & Conference Center (略称BEXCO)という巨大な会場で開催された。本学会では電気と微生物に関する幅広いテーマを取り扱っており、特に、微生物の働きを利用して有機物から電気を取り出す「微生物燃料電池」の研究と、アルコール等の有用物質を生産する微生物に電気を与えて生産性を高める「微生物電解装置」の研究が盛んである。そのほかにも、バイオセンシング、バイオコンピューティング、基本的な微生物代謝機構に関する研究などがテーマとして掲げられていた。今回は、アジア地域を中心に16カ国から合計約180件の口頭発表、ポスター発表がなされた。発表件数は、韓国の57件を抜いて中国が60件と多かった(日本からの発表は16件)。本学会で扱う「微生物燃料電池」は、低コストで下水汚泥の浄化が賄えるシステムとして注目されており、下水道インフラが充実していない新興国・農村地域において、メンテナンスフリーの浄化装置としての適用が期待されている。このような背景により中国などで研究が盛んになされているようである。さらに、今回のAP-ISMETは、釜山グローバルウォーターフォーラム(BWF)との共同開催の形がとられ、特に水環境とエネルギーに関するトピックスに焦点が当てられた。

学会会場となったBEXCOの外観(左)と内部(右)

2.学会における印象的なトピック

 発表の主体は、「微生物燃料電池」のシステムを使った高効率廃水処理に関するものが多く、装置の最適化検討に関する発表が目立った。基調講演を行った米国Penn State University の Bruce E. Logan教授は、まさに微生物燃料電池の大家であり、水‐エネルギー‐食料のつながり(関連)を考慮した、微生物によるバイオプロセスの適用についての講演がなされ、多くの聴衆が集まった。
 「微生物燃料電池」は本来、微生物の持つ効率の良い変換作用によって、下水汚泥などの有機物から電気エネルギーを取り出すことをコンセプトとした装置である。しかし、発電量が非常に微弱であることから、いわゆる電池としての活用はなかなか難しいというのが大方の共通認識である。その一方で、微生物燃料電池の電極に棲み着いた微生物が非常に効率よく有機物を分解することから、廃水処理装置としての技術開発に力が注がれている状況である。
 電極に棲み着いた微生物が効率よく有機物を分解する作用を、いわゆる発酵によって有用物質を作り出す微生物に応用すると、わずかな電気を与えることで微生物の生産性を高めることができる。これが「微生物電解装置」のコンセプトであり、微生物燃料電池に従事する研究者の一部が「次のテーマ」として興味を抱いている。
 今回、報告者らは、この「微生物電解装置」に関する研究成果として、「還元力の供給によるバイオ燃料生産の促進効果」と題したポスター発表を行った。発表では、微生物の培養の際に電気を与えることで、アルコールの生産性を向上させたり、微生物の増殖を促進させ得ることを示した。我々の手法では、微生物の遺伝子組み換えなどを利用することで、乳酸などの有用物質を電気エネルギーで作り出すことが可能であり、微生物燃料電池に従事する来場者からも、我々のプロセスに魅力を感じるといった意見を多数頂いたほか、熱心にポスターの内容を尋ねてくる研究者があった。
 我々の発表内容が時宜を得ていると評価されたようで、光栄にもBest Presentation Award を受賞し、印象に残る学会となった。

3.釜山・センタムシティ

 釜山は、韓国南東部に位置する港湾都市であり、ソウルについで韓国第二の人口を有する。東京(成田)からは飛行機でわずか2時間ほどの距離にあり、時差もなく、まるで国内都市へ出張する感覚で訪れることができる。
 市内は地下鉄などの交通網が充実しており、空港、みやげ物店などが密集する市場、若者が集う繁華街、近代的なショッピングモールのエリアを自由に行き来でき、大変便利であった。南部の港に近い高台にある釜山タワーに登ると、活気ある港の風景や、すぐそこまで迫る山々、山の中腹にまで立ち並ぶマンション群など、海と山の町、釜山の特徴をとても良くとらえることが出来た。
 学会会場のあるセンタムシティは、かつての空港跡地を開発した商業複合都市で、釜山繁華街から地下鉄で20分程の場所にある。釜山国際映画祭の会場としても知られており、今もなお高層ビルの建設が進む活気あるエリアである。学会会場付近はどちらかというとビジネス街で、いわゆる観光スポットではないため、昼食をとるレストラン選びには若干の勇気が要った(ハングルが読めず)が、それもまた旅の思い出である。
 釜山は、おそらく日本本土から最も近い外国の町の一つであろう。今回初めて訪れてみて、その近さと、発展してゆく町の活気に大変魅力を感じた。機会があれば、もう少しハングルを読めるようにして、再度この地を訪れたいと思う。

図1 釜山タワーから見下ろした港の風景。

図2 思い切って注文した「チャンポン」(写真右)は激辛シーフード(でもおいしかった)

©2016 電力中央研究所

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