学会活動

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第8回クリーンコールテクノロジー国際会議(CCT2017)に参加して

環境化学領域 主任研究員
青田 新

1.CCT2017の概要

 CCT(International Conference on Clean Coal Technologies)は、国際エネルギー機関(IEA)のクリーンコールセンターが主催する会議であり、石炭火力発電に関連する高効率発電や温暖化対策、環境対策等について討論される。2002年に第1回が開催され、2005年以降は隔年で開催されている。今回の会議はイタリアのサルデーニャ島のカリャリで、5月8〜12日に開催され、欧州を中心に31か国から255名が参加した(図1)。なお、カリャリは第1〜3回を実施した本会議とは縁の深い街である。口頭発表およびポスター発表は合計145件あり、中国の発表件数が断トツの28件、次いで英国が16件、ドイツが15件、イタリアが12件、日本が9件であった。
 環境科学研究所では、石炭火力発電所の排水計測・処理技術に関する研究を進めており、今回は脱硫排水中COD成分の計測・管理ならびにオンラインセレンモニターに関する発表を行った。

図1 学会会場及び滞在先となったT-Hotel Cagliari

2.CCT2017における印象的なトピック

 本会議における環境対策関連の発表から環境規制の世界動向に関する情報を収集、整理したところ、ここ数年で各国において石炭火力発電所から排出される大気質の規制が強化されていることが明らかとなった。  欧州では、特定大気汚染物質の国別排出量の削減に関する欧州指令(Directive 2016/2284、2016年12月公布)により、SO2、NOx、非メタン揮発性有機物質、アンモニア及びPM2.5の削減に関する規制値が国別に設定された。例えばSO2排出量では、2030年以降はほとんどの国で2005年を基準として60%以上削減しなければならない。
 インドのシンクタンクであるCentre for Science and Environmentの発表によれば、インドにおける石炭火力発電所から排出される大気質に関する規制は、これまでPMのみであったが、2015年12月にPMの規制値が強化されるとともに、新たにSO2、NOx、水銀の規制が追加された。インドではPM、SO2、NOx、水銀の国内排出量の60%、45%、30%、80%が石炭火力発電所由来であるが、これらの環境対策がなされているのは石炭火力発電所の20%程度にすぎないとのことである。規制を満足するための対策費用は約95億USドルと見積もられ、費用面が課題であることを挙げていた。
 華中科技大学のZhao氏の発表によれば、中国では2011年に水銀が初めて規制されると同時に、PM、SO2、NOxの規制値が大幅に強化された(GB13223-2011)。特に深刻な大気汚染を発生しやすい地区には、重点地区としてより厳しい規制が適用されている。中国では除塵装置や脱硫装置、脱硝装置の追設等が急速に進んでおり、PM、SO2、NOxの排出量は大幅に低減されていることが知られているが、水銀排出量はあまり低減されておらず、中国国内の総排出量の30%程度が石炭燃焼由来のようである。
 海水を利用する脱硫方法についていくつか発表があった。日本では淡水が豊富であるため、注目されにくいが、世界的には水不足が大きな問題となっており、UAEでも海水脱硫方式が用いられているようである。水を使用しない、あるいは水を節約する火力発電のシステムは、今後重要になってくると思われた。
 火力発電所の排水に関する発表は、我々の発表のみであった。US-EPAが2015年に発表した脱硫排水の新規制(Effluent Limitations Guidelines and Standards for the Steam Electric Power Generating Point Source Category)は極めて厳しい規制値であり、米国で毎年開催されるエネルギー・発電・環境を対象とした国際会議であるEnergy, Utility & Environmental Conference(EUEC 2017)ではWastewater seleniumというセッションが設定されるなど、関心が極めて高い。一方で、欧州からの参加者が多かった本会議では、セレンモニターの質疑や参加者との情報交換などから、排水中セレンの規制について知らない参加者が多いようであった。現状、EUとしては排水中セレンを規制していないためであると思われるが、各国の排水規制状況を踏まえて、EUがセレンを新たに規制対象とする可能性もあり、今後の動向に注視したい。

3.サルデーニャ島カリャリの歴史と食文化

 サルデーニャはイタリア半島の西に位置し、地中海で2番目の大きさを誇る。サルデーニャは先史時代より人が住んでいたとされ、紀元前1,000年代に建造されたヌラーゲという石造りの円錐形の塔が数多く現存している。また、2世紀に造られた円形闘技場は現在でも野外劇場として使われている(図2左)。11世紀にはピサの支配下に入り、丘の上に城塞都市が築かれ、現在でも広大な城壁が残されている。城塞都市跡には14世紀に建てられた歴史的建造物が残っており(図2右)、城塞都市入口に位置するサン・レミー要塞の屋上は街を一望できる公共テラスとして市民に利用されている。

図2 カリャリの歴史的建造物
円形闘技場(左)とサンタ・マリア・ディ・カステッロ大聖堂(右)
1312年建築のピサ・ロマネクス様式の大聖堂はとても美しい

 報告者は、海外へ行ったらスーパーマーケットに行くのが楽しみの一つである。地元の人がどのようなものを買って生活しているかが垣間見える。今回はCONADというスーパーマーケットとサンベネデット市場へ足を運んだ(図3)。イタリアということもあり、チーズと生ハムは充実した品揃えであり(図3上段)、低価格で購入することできる。色とりどりの野菜や果物はキレイに並べられており、市場ではどのお店も素敵なディスプレーであった(図3左下)。スーパーマーケットでは、ビールやワインが多種揃っており、こちらも低価格で購入できる(ビールの大瓶サイズで1ユーロ程度)(図3右下)。サルデーニャの地ビールであるイクヌーザは、毎日欠かさずいただいた。

図3 スーパーマーケット及び市場の品揃え
(左上)サルデーニャは人口より羊の数が多く、羊乳製チーズが多い。
(右上)写真左の生ハムカッターで必要量を切ってくれる。
(左下)見慣れない野菜や果物も多く、配色が素晴らしい。
(右下)最下段のビールがサルデーニャ地ビールのイクヌーザ。

 スーパーマーケットと市場で原材料を調査したら、今度は現地の食事を楽しまなければならない。サルデーニャ料理は、イタリア料理のほか、アラブや北アフリカなどの料理の影響を受けて発展しており、2010年にユネスコの無形文化遺産に指定された「地中海の食文化」の一部を構成する。地中海の海産物が豊富であり、報告者はタコ、エビ、貝、そしてサルデーニャ料理であるイソギンチャク(図4左)をおいしくいただいた。サルデーニャの代表的なパスタは、粒状のフレグラ(図4右)やニョッキ状のマッロレッドゥスであり、これらもおいしくいただいた。

図4 現地で食したサルデーニャ料理
柔らかい食感のイソギンチャクの揚げ物(左)と
サルデーニャ名物のツブツブパスタ(Fregola)(右)

©2017 電力中央研究所

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