学会活動

学会活動

第4回国際環境放射能学会(ENVIRA2017)に参加して

生物環境領域 主任研究員
橋田 慎之介

1.ENVIRA2017の概要

 ENVIRA (International Conference on Environmental Radioactivity) は天然放射性核種の検出技術や人工放射性核種の環境動態など、自然界における放射性物質の挙動に関して議論する学会です。4回目を迎える今年は、5月29日〜6月2日にチェルノブイリから北西へ約600kmに位置するリトアニアの首都ビリニュスで開催され、30ヶ国超から200人以上が参加しました(図1)。環境動態研究に関しては、カザフスタン東部のセミパラチンスク核実験場やチェルノブイリ、福島原発事故後の周辺環境のモニタリングや環境動態に及ぼす影響の調査研究が主なトピックスとして取り上げられており、5日間で口頭発表106件とポスター発表116件の報告がありました(図1右)。
 私は現在、科研費研究で森林に降下した放射性セシウムの林床における真の動態を解明する研究を行っており、これまでの研究成果の発表および今後の研究進展に向けた情報収集を目的に本学会に参加しました。

図1 学会会場からみた街の風景(左)とポスター会場(右)

2.学会における印象的なトピック

 ノルウェイやギリシャなど様々な国における長期間の広域土壌モニタリングの経過報告があり、いずれもチェルノブイリ後から30年が経過したにも関わらず、未だに放射能レベルが高い地域があるとの結果が散見されました。各国が精力的に研究を進めているにも関わらず、”環境の違い”の実体については未解明のようです。また、今学会では”濃霧”が汚染経路となりうる可能性についても指摘され、霧の発生しやすい森内での放射性セシウム動態を考える上で非常に興味深いトピックでした。
 今回私は、森林に堆積した放射性セシウムは、落ち葉や枯れ枝に含まれる難分解性高分子に吸着しており、この高分子が微生物活性で分解されると可溶化して水系に溶出する可能性について報告しました。植物への吸収や2次汚染経路の研究に従事する来場者からは、自然界での溶出速度や再吸着性の可能性等について熱心な質問を受け、汚染経路の違いがその後の2次汚染の違いにどのような影響を及ぼすのかについて有意義な議論をすることが出来ました。

3.古都ビリニュス

 会場となったホテルは世界遺産登録された旧市街から1kmほど離れたネリス川のほとりで、学会参加に集中できるロケーションでした。宿泊施設=会場だったため、講演の合間の1日3回のコーヒーブレイク(しかも毎度プチケーキやクッキーが提供される!)、講演会場隣のレストランでの学会ランチ、と夕刻のセッション終了までの間は学会会場で濃密な時間を過ごせました。幸いなことに、開催中は日も長く22時を過ぎてもまだ明るいため夜の街歩きには良い季節。世界で3番目に古い歴史をもち世界遺産にも登録されているビリニュス大学に足を延ばすと、大学なのに入場料(1.5ユーロ=約190円)を徴収され驚きましたが、学内とは思えない規模の荘厳な教会もあり、費用対効果は十分と思われました(図2左)。
 リトアニアと言えばミード(蜂蜜酒)とリネンしか思い浮かびませんでしたが、さすがはバルトの国と言わんばかり、無数の地スピリッツが地元ではお勧めだそうです(図2中、右)。嗜みながら隣席のリトアニア人男性と話していると、その方はリネン職人であり工房を見学させてもらえることになりました。旧市街にあるビル地下工房でしたが、危険な目に会う事もなく、さまざまなリネンを見せてもらいました。自殺率や殺人事件発生率の高さが話題になる国ですが、適度な距離感を保って親切にしてくれるビリニュス市民の気質は、日本にいるようで落ち着けます。ぜひとももう一度、プライベートで訪れたい街です。

図2 ビリニュス大学の教会(左)、21時半の街中のカフェ(中)、市民お勧めのスピリッツ(右)

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