学会活動

学会活動

ENVIRA 2017に参加して

水域環境領域 特別嘱託
立田 穣

1.会議の概要

 2017年5月29日から6月2日にかけて開催された環境放射能研究に関する国際会議ENVIRA2017に参加し、当所の研究成果を発表した。同国際会議は、環境放射能に関する研究進捗の情報交換を目的に、2年毎に主に欧州で開催され、前回2015年はギリシャ・テッサロニキ、今回は中欧リトアニアの首都ビリニュスのベスト・ウェスタン・ホテルが会場となった(図1)。会議では、約240名の参加者から、口頭とポスターを合わせて約220件の発表があった(図2)。内容は、森林・土壌・陸水域・海洋を対象に、大気圏内核実験・チェルノブイリ・福島事故などに由来する放射性セシウム・ストロンチウム・プルトニウム・トリチウム、および自然放射性核種の挙動・分布・分析手法の最新成果が報告された。次回は2019年にチェコ・プラハで行われる予定である。

2.研究発表

 報告者らは、福島の沿岸生態系における環境放射能について、科学研究補助金新学術領域「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究」で実施した「海洋生態系における放射性物質移行・濃縮状況の把握」に海洋拡散計算および生物移行モデルを適用した成果を発表した。会議では、同じように水生生物について研究成果を発表したドイツ、韓国、リトアニアの研究者と、チェルノブイリ事故由来の放射性核種の挙動との類似や相違について議論を行った。その結果、例えば、汽水域であるバルト海や黒海沿岸では、魚類は体内の塩分を一定に保つために、吸収した放射性セシウムを排出しにくいのに対して、福島の太平洋沿岸のような海水環境ではこれらより排出が速い傾向がある、という点について認識を共有した。その他の研究トピックとして、日本の環境モニタリングデータの豊富さに関して各方面の研究者から謝意が示された反面、モニタリングにかかるコストを鑑みた場合、今後はその実施回数や頻度を検討すべきという意見もあった。

3.所感

 ビリニュスは、歴史地区が世界遺産として登録される古い街並みが美しい町であった。リトアニアは緯度が高く6月の日照時間が長いため、会議終了後も街中の散策やオープンテラスでの夕食を楽しめる理想的な環境であった。また、治安もよく、中欧らしいのんびりした時間が流れる中での国際会議は印象的であった。国際会議では、研究発表だけではなく、人的ネットワークの充実と会議期間中の息抜きとを兼ねて半日ツアーが行われるが、今回の国際会議では参加者のほぼ全員が参加して近郊のトラカイ城の見学を楽しんだ(図3)。

 なお、会議の共同議長であるポビネック博士は、福島のみならずチェルノブイリ事故由来の海洋環境放射能研究に関しても長年の実績を有する。博士は海洋環境放射能研究に精力的に従事するのみならず、国際会議の開催、運営にも非常に積極的であり、この分野で彼の名前を知らない研究者はいない。報告者とは、国際原子力機関のモナコ海洋環境研究所の専門家会議などで一緒に活動することも多く、旧知の仲である。日頃の研究の実直な積み重ねが将来の役に立つことをお互いに実感した再会であった。

©2017 電力中央研究所

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