学会活動

学会活動

第2回JOGMEC-GNS Science Workshopに参加して

環境化学領域 上席研究員
窪田 ひろみ

1.会議の概要

 独立行政法人石油天然ガス金属鉱物資源機構(JOGMEC)は、ニュージーランド(NZ)の政府系研究機関であるGNS Science International Limitedと、地熱開発に係る環境影響評価、資源調査手法や地元における理解促進等について、双方向的な技術協力を行っている。今回、この一環として、第2回JOGMEC-GNS Science Workshop が「地熱事業と温泉・間欠泉等との関係(持続的地熱資源開発)」をテーマに、NZのロトルア市とタウポ市にて開催された(2017年11月20〜21日、図1)。

 発表は日本から8件、NZから6件あり、地熱開発事業者、自治体、研究機関を中心に日本から約40名、NZから約50名の参加があった。報告者は、JOGMECの依頼により、日本の地熱発電開発に係る環境アセスメントの概要、国による理解促進事業、地域共生事例等を紹介した。

 NZでは、土地と資源の持続的管理を目的として、1991年に従来の環境保全・自然保護関連の法律が資源管理法(Resource Management Act: RMA)に統一され、手続きが一元化された。RMAは先進的な法制度の一つとされており、パプアニューギニア政府等が地熱開発法を策定する際にRMAを参考にしたとされる。このようにNZは、地熱開発に係る技術だけでなく法制度に関しても海外展開を指向し、各国の地熱開発の推進に貢献している。

 ワークショップ後には、ネットワーキングディナーが開催され、相互にビジネスパートナー探しや研究・事業協力に向けた交流が活発に行われた(図2, 3)。

図1 ワークショップ会場 図2 ネットワーキングディナー会場からの眺め
図3 ネットワーキングディナーでのビュッフェ

2.フィールドトリップ

 シンポジウムの翌日にはフィールドトリップとして、地熱発電所とGNSへの訪問を主とする開発事業者向けと、温泉資源の直接利用施設を中心とした自治体関係者向けの2コースが催行された。報告者は後者に参加したので、概要を紹介する。

・Plenty flora

 Plenty floraは熱水を利用した温室栽培施設で、年間60万本以上のガーベラを商業栽培している(図4)。ガーベラは亜熱帯植物で通年で14℃以上の室温を保つ必要があるため、2本の井戸から供給される熱水(85℃, 65℃)に井戸水と雨水を混ぜて50-55℃にし、温室ハウスに供給して温湿度管理を行っている。利用後の温水は、還元井から地下に戻される。配管へのスケール付着(炭酸カルシウムやシリカ等の化学成分)を低減するため、井戸横のタンクから常時ガス成分を放散させている。これによって井戸や配管の清掃が2年に1回の頻度で済むようになったとのことである。日本でもスケールに苦慮している地域が多いため、清掃頻度が少ないことに驚いた。経営者はオランダで栽培技術を学んだ後、1990年半ばにNZに移住し、2002年から事業に着手した。経営者夫妻の他、7名の従業員で運営されている。既に設備投資は回収され、毎年一定規模の利益を得ている。

図4 地熱を活用したガーベラの温室ハウス

・Huka Prawn Park

 Huka Prawn Parkは、近隣のWairakei地熱発電所からの排熱を利用したエビ養殖施設だが、養殖にとどまらず観光業(エビ釣り、レストラン、ジェットボート、養殖施設内ツアー等)も営んでいる(図5)。当初はエビ養殖のみであり、電力費と人件費を賄うことが困難であったが、観光業収入によって収益が確保できるようになった。エビの餌や養殖のノウハウは独自に開発したものである。雇用は養殖業で5名、観光業で75名とのことであった。

図5 エビ養殖施設(Huka Prauwn Park)の様子
エビ釣りの様子(左上)、テナガエビの雄(青色)と雌(透明)(右上)、
エビの稚魚に直接餌をあげる様子(左下)、レストランのランチで注文したエビのフライ(右下)

3.所感

 NZといえば羊。今回の会場となった北島にあるロトルア市は、オークランド空港から約200kmも離れておりバスで3時間余り要した。往復の車窓からは数多くの羊や牛がのんびりと草を食んでおり、のどかな景観を楽しむことができた。NZの食事は、羊肉だけでなく魚介類も大変美味しい。前述のネットワーキングディナーはビュッフェ形式で(図3)、全種類を制覇できない程の様々な食材が並んでいた。ただ、報告者は現在歯科矯正中のため、ラムチョップなど分厚い肉にかぶりつけなかったのが残念であった…。どのテーブルでもまずエビの殻を何匹も剥いて食べている方が多く、NZの方々が結構なエビ好きというのは新たな発見であった。一方、自分も含め日本人参加者の多くは、エビは美味しいと知りつつも、食べる手間と手の汚れを厭う人が多く、日本人のお皿にはエビの残骸が殆どなかったのが特徴的であった。

 フィールドトリップで見学したエビ養殖施設では、老若男女がエビ釣りを楽しんでいた。引き上げるタイミングが難しいらしく、一匹も釣れない場合もあるとのこと。我々は今回はできなかったが、今後機会あれば是非試してみたいものである。日本国内でも、地熱発電所の温泉熱を活用した同様のエビ養殖が福島県の土湯温泉で開始されている。現在、エビ釣り観光も準備中とのことなので、エビ釣りが始まったら再訪してみたい。

 地熱発電を開発する際は、それに伴う熱水や温泉熱の有効活用により農水産業や観光業を創出し、地域活性化に役立つ可能性がある(EEトレンドウォッチ第2回)。今回のワークショップでは、温泉で有名な大分県、別府市、秋田県湯沢市の3自治体の方々の発表もあり、日本の地熱開発や温泉利用に関する情報提供もなされた。一方、NZの様々な温泉活用施設は、上記事例の他、蜂蜜、粉ミルク等もあり、先住民族であるマオリ族との協働事業等により地元雇用も創出している。NZとは法制度や習慣など異なる部分も多いが、相互に学ぶ点も多かったように思う。今後、日本での地熱開発や関連研究において今回の知見を役立てていきたい。

 今回の出張では、両国の参加者との交流により、地熱開発の地域共生に関する有益な知見を得ることができた。また、フィールドトリップではNZの事業者から直接、話を伺う機会が得られ、大変勉強になった。貴重な機会を頂きましたJOGMECおよび関係者の皆様に感謝申し上げます。

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