学会活動

学会活動

ISRS2017(Symposium of the International Society for River Science)に参加して

水域環境領域 主任研究員
鈴木 準平

1.ISRSの概要とトピック

 ISRS2017は国際河川学会(ISRS)が主催する隔年の国際会議であり、5回目の会議が2017年11月19〜24日にニュージーランド(NZ)のハミルトンで開催された(図1)。今回の会議では ”Integrating Multiple Aquatic Values” をテーマに、河川環境に関する基礎から応用までと、河川管理者からの順応的管理や意思決定方法に関する事例研究など幅広いトピックスが取り上げられた。発表件数は304件(うちポスター30件)で、約600人が参加した。自然豊かなNZということもあり、日本国内の学会ではあまり見かけることのない地域環境に関心の高い地元市民も多く参加していた。

図1 学会会場のClaudelands

 報告者は、河川環境の変化によって生じる生物への影響を、体内のストレス応答物質を測定することで評価する研究を行っている。本会議では、異なる水温環境下で濁質に曝露された場合のストレス応答物質の変動に関する発表を行った。発表に対しては、「他のストレス要因は調べているか」や「群集構造の応答と合わせた場合はどうなのか」などの質問があった。本会議では生化学応答に関する専門家は少なかったが、「どのような指標を対象に応答を調べるのがよいのか」などに関して議論でき、大いに刺激となった。

 今回の国際会議で興味深かった点を以下に記す。

(1)長期データの重要性

 河川という動的な環境においては、短期間のデータでは評価を誤る可能性が高いため、長期間の調査データが必要であることが示された。また、可能な限り長期的なモニタリングを行うことができれば、Plan-Do-Monitor-Learnを繰り返すことで個々の管理方策の効果の不確実性によって生じる環境改変リスクを平準化でき、一方で各方策に対する環境応答についての知見が蓄積されるため、結果として河川管理全体のリスク低減につながるといった報告がなされた。

(2) 河川再生(River restoration)

 海外では簡易な河川再生手法として、河川内に大きな倒木を人為的に導入することが数多く実施されている。これは倒木によって河川の物理場が複雑になり、多様な生物が生息する環境が形成されるためである。会議では、倒木を設置したものの、結果的に生物の多様性が改善されなかった事例が報告された。効果が得られなかった要因としては、倒木の大きさや形状、設置場所の条件に不備があり、設置前後で空間的な流れ場が変わらなかったことが挙げられていた。このように論文では公表されにくい失敗事例を整理していくことも複雑な河川環境を理解する上で重要なことではないかと感じた。

2.ハミルトンとワイカト川

 ハミルトンは、NZで最も大きな河川であるワイカト川に貫かれた土地である。河川沿いには先住民のマオリ族の集落があり、昔から河川利用が活発だった地域である(現在、マオリ族の集落は、親水公園となり市民の憩いの場として利用されている)。大きな河川であるため栄養源も豊富でウナギなどが生息し、昔から食用として利用されていた。近年は、外来種(金魚もかなり生息している)やハミルトンから50kmほど下流にあるハントリー火力発電所での取水などによる影響から、保全の対象となっている。市街地の脇を流れる河川の両岸は崖になっている箇所(街は崖の上に形成されている)と低くなっている箇所(遊歩道が整備されている)が交互に続いているが、概ね直線的な河道となっていた。表面の流れからの推測でしかないが、直線的な河道の割には河川内の流れは複雑なように見受けられた。また両岸には樹木が繁茂しており、こういった点が生物生息量(バイオマス)の豊かさにつながっているのかもしれない。

 報告者は、遠出した際には可能な限り近隣のダムを見学することを楽しみの1つとしている。今回、貴重なチャンスを得たので、ワイカト川の上流に位置するAratiatiaダムを訪問した。このダムの上流には有名なフカ滝があり、多いときで220 m3/sの流量を有している。ダムは毎日10、12、14時にゲート放流を行っており観光スポットとしても有名である。おおよそ10 mの川幅に80 m3/sの水の流れる勢いは圧巻であった(図2)。すぐ下流に位置する発電所は年間331 GWhの発電量を誇るとのことであった。

 ちなみに、当地の先生から最も感動的な場所としてオススメいただいたワイカト地方の観光スポットは、Glow Worm(日本語ではツチボタルとして紹介されているが、実はキノコバエ科のハエの仲間)が生息するWaitomo caveであった。ツアー参加者しか入場を受け付けていないため、報告者は残念ながら訪問することができなかったが、近くに寄られた際は訪ねてみてはいかがだろうか。

図2 Aratiatiaダムの放流前(左)と放流後(右)
写真奥がAratiatiaダム

©2018 電力中央研究所

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