内容概要 | 本稿では、純然たるモノの問題でも、人間の側の問題でもない、まさに人とモノとの相互作用がもたらす問題としてのヒューマンエラーを取り上げている。心理学実験でサイモン効果と呼ばれる現象がある。「右」「左」という画面の指示に従って左右のキーを押すという単純な課題を実施するが、その際にその文字を出す位置を上下左右に変化させる。このとき、画面右端に「左」を提示すると、ほぼ間違いなく人は誤って右のキーを押す(あるいは左キーを押すのに通常の数倍の時間を要する)。このヒューマンエラーは当然起こりうるものであり、人という認知システムと「左という文字が自分の身体にとって右側に提示される」というモノ側のデザインとの組合せにおいて、「人が誤った反応をしやすい状況」が作られているのである。本稿では、ノーマンによる、人にとってより良いシステムを作るための「7つの原則」も併せて紹介し、モノのデザインを変えることで人の誤操作をなくすことができる点を解説している。今後は、システムが導入されることで、看護現場の活動・作業全体がどのように変化するかを検討し、記憶スリップ(し忘れ)を誘導する作業構造や、エラーを起こしやすい認知的負荷状態を作り出す医療機器デザインについて明らかにする必要がある。
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