人身災害防止のためのチェックポイント抽出



背景


我が国の人身災害の発生件数は、近年横ばいあるいは若干増加傾向にあるとも言われている。人身災害防止の特効薬は存在せず、人身災害事例を元にヒューマンファクターの観点から人身災害を防ぐための視点の明確化、さらにこれらに基づく人身災害防止のための具体的な活動の普及が望まれている。


目的


  • ・ 既存の災害分析手法のうち、人身災害の分析に適用できると思われる手法について、文献調査および実事例への適用を通して比較・評価する。
  • ・ 原子力発電所における人身災害事例を収集および当所のJ-HPESを用いて分析し、人身災害を防ぐため、人間の立場から注意するべきポイントをまとめる。


主な成果


1. 既存の災害分析手法の人身災害の分析への適用性の比較・評価
既存の災害分析手法の中には、人身災害に特化した手法は存在しないが、比較的人身災害の分析にも適用しやすい手法としてJ-HPES、ASSIST、FTA、特性要因図が挙げられる。これらの中でもJ-HPES、ASSISTは分析のための的確なガイダンスが充実していることから、本研究では人身災害事例の分析に電力大で開発したJ-HPESを適用することとした。


2. 「人身災害を防ぐ5つのポイント」の明確化と人身災害防止のための小冊子の作成
(1) 人身災害事例を収集・分析した結果から、人身災害は作業現場における従事者の「安全上の注意不足」が原因で起こっている場合が多く、これを防ぐためには、

・ 「作業計画」
・ 「TBM ※1
・ 「作業中のコミュニケーション」
・ 「作業責任者の管理監督」
・ 「作業者自身の安全意識」

の5段階で作業者の安全に対する注意を喚起することが重要であることを指摘した(図1)。

(2) 5つの段階での作業者に対する注意喚起の重要性についてイラストを用いて分かりやすく説明するとともに、そのためには具体的にどのような活動が効果的であるかを示す例として実際の作業現場で実施されている活動を各段階ごとに紹介した。

※1 TBM :Tool Box Meeting の略で作業前打合せのこと。




(図1)