ヒューマンファクターカルチャー醸成支援教材の開発



背景


運転や保修にかかわるトラブル発生率は年々低下の傾向をたどっている。一方、このようなトラブルに占めるヒューマンエラーの割合はここ15年間、約20%で推移しており、より一層の低減が求められている。このようなヒューマンエラーを低減するためには、ヒューマンファクター(HF)的なものの考え方を浸透させる教材が必要とされている。


目的


本研究では、原子力プラントの運用において、「自分の業務の安全などに、ヒューマンファクター的な観点から自発的に内省あるいは改善提案する態度を養う」ためのHFカルチャー醸成支援教材を開発する。


主な成果


1. HFカルチャー醸成教育の基本理念の確立(図1 )
従来の教育は、顕在化したトラブルの再発防止対策ならびに類似事象の未然防止対策を理解させることに主眼を置いていた。しかしながらこの方式では、トラブルの背後にある潜在的なHF要因を充分理解させることはできなかった。そこで、本研究では、日常、自分の業務の安全などにHF的な注意を向けることにより、潜在的なHF要因に気づかせることを教材開発の基本理念とした。

2. 教材の開発(図2)

  • (1) プラントの運用に不可欠な「管理」と「実務」の観点から、「人間と人間」、「人間と機械」、「人間と環境」を切り口としたHF的に体系的な教材を開発した。
  • (2) インストラクターによる集合教育、個人による学習など、多様な教育形態に適用できるよう、媒体としてインストラクターが用いるビデオとOHP(解説)集ならびに個人が用いるパソコン用CD-ROMを作成した。
  • (3) 教材は、受講者がよく知っている実事例を、記憶に残るようCGで臨場感を持たせて描写し、その中に潜むHF要因を、結果(事故)から原因に遡及する形で、問題点を投げかけながら解説した。これにより、HFの重要性を喚起し、なぜ事故が起きたかを「考えさせる」内容とした。

3. HF 教育への適用性
現場で5教材を用いて試運用を行い、HF教育に対する適用性を確認した。




(図1)


(図2)