ヒューマンファクターカルチャーを醸成する教育体制の確立



背景


HFCでは、平成9~11年度の先行研究において、主に実務者を対象に、ヒューマンファクターの重要性を啓発するための教材を開発した。発電所現場にヒューマンファクターカルチャーを浸透させ、現場の安全を達成するためには、発電所の上級管理者から実務者に至るまで、ヒューマンファクターを真に理解することが求められている。


目的


発電所でのヒューマンファクター理解を一層深めるため、一部不足教材を開発するとともに、これらを用いた電力大のヒューマンファクター教育体制を構築する。


主な成果


1. 上級管理者層用教材の開発
最近の事故や事件を参考に、発電所の上級管理者層には「現場を知ることの大切さ」を訴えることとし、①現場の情報を集める、②情報の周知徹底を繰り返す、③現場の人達と本音を言い合える関係を作る、ことを骨子とするA4版、8ページの教材を開発した(図1)。

2. ヒューマンファクター教育体制の検討
開発教材を用いた電力大のヒューマンファクター教育体制を構築するため、HFCにおいて、以下の3教育コースについて運用を行っている(図2)。

(1) ヒューマンファクターセミナー
本セミナーは、HFインストラクター希望者に対する導入教育と、電力全分野の一般人に対するHF啓発の目的を持つ。これまでの試運用結果から、本セミナーのカリキュラム構成として、概ね、①HEの未然防止、②HEの発生メカニズム、③HEの再発防止、の内容で1日開催が望ましいことが判明した。

(2) HFインストラクター養成「基礎コース」
本コースは、電力会社の初級HFインストラクターを養成するための教育コースで、先行研究で開発したビデオ教材の利用方法の習得を主たる目的とする。3回の試運用結果から、カリキュラム構成として、①HF教育経験者からのアドバイス、②先行開発教材を用いた講義実習、③情報共有化のための現場HF課題の検討、の内容で1日半開催が望ましいことが判明した。

(3) HFインストラクター養成「応用コース」
本コースでは、電力会社の上級インストラクターを養成するための教育コースで、事例分析とその結果のHF的考察訓練を主たる目的とする。これまでの試運用結果から、カリキュラム構成は、ヒューマンエラーの事例分析を通じて、得られた教訓や知見を現場に適用する方法について2日間のスケジュールで実施することが望ましいことが判明した。

3.教育マニュアルの開発
電力各社のヒューマンファクター教育を支援するため、初級インストラクター向けの基礎教育実施マニュアル、および上級インストラクター向けの応用教育実施マニュアルの2冊を作成した(図3)。




(図1)


(図2)


(図3)