財団法人 電力中央研究所

電力中央研究所 研究報告書(電力中央研究所報告)
[CRIEPI Research Report]

研究報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の研究報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。 ダウンロードの際には、当サイトの利用規約を遵守の上ご利用ください。

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研究報告書 詳細情報
[Detailed Information]

報告書番号 [Report Number]
H16008
タイトル
レーザー誘起ブレイクダウン分光によるがいし付着物質計測技術の開発(その2)-送変電設備への適用に向けた磁器がいし付着塩分中Na,Clの遠隔計測-
[Title]
Development of Measurement Technology of Substances Attached on Insulator by Laser-Induced Breakdown Spectroscopy (II) - Remote measurement of Na and Cl in salt deposited on porcelain insulators for the application to transmission and transformation equipment-
概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)
背景
電力流通設備の内、特にがいしやブッシングの汚損は、電力系統の絶縁信頼性に影響を与えるため、汚損物の同定や定量計測は重要である。現在、がいしの汚損状況の評価は、パイロットがいしの汚損採取により行われているが、レーザー誘起ブレイクダウン分光(LIBS)注1)を用いることにより、がいし付着物質の多成分、オンサイト、迅速な遠隔計測を行うことができ、また、連続的なデータ収集が可能である。このため、運用中のがいしに対する汚損状況の正確な評価が期待される。前報では、離隔距離10 mにおいて、Naの発光強度を用いることにより、一般汚損地域から超重汚損地域までの塩害汚損区分に対して、塩分付着密度(SDD)の遠隔計測の可能性を示した[1]。しかしながら、本手法を送変電設備に適用するためには、20 m以上注2)の離隔距離での計測注3)が望まれる。また、測定のダイナミックレンジや測定精度を向上するためには、複数の元素の発光線を用いることが望ましい。

目的
LIBSを用いたがいし汚損遠隔計測技術の送変電設備への適用に向け、離隔距離20 mまでの計測におけるNaとClの発光特性を明らかにする。

主な成果
磁器がいしを模擬したサンプルに塩分を付着させ、LIBSにより付着物質の成分を計測した注4)。
1.Clの発光線を用いた高精度な検量線の提案
Clを用いた検量線の特性を明らかにするため、近距離(25 cm)におけるClの発光特性を測定した。サンプルのほぼ全面に渡る9箇所においてレーザー光を照射することにより、O (計測波長:844.64 nm)に対するCl (837.59 nm)の発光強度比が、0.05〜0.6 mg/cm2のSDDに対して線形に増加することを示した(図1)。これより、Clの発光を用いることにより、広い濃度範囲において高精度な検量線が得られる可能性を示した。
2.離隔距離20 mの遠隔計測におけるNaとClの発光特性
可搬型のレーザー装置を用いて、離隔距離20 mの計測において、Na (819.48 nm)とCl (837.59 nm)の発光特性を測定した(図2、3)。その結果、NaとClの発光強度がSDDに対して単調増加することを示した(図4)。低濃度では強いNaの発光線を用い、高濃度ではNaとClの二つの元素の発光線を用いることにより、広い濃度範囲で測定精度の高い計測が期待される。これにより、NaとClの発光線を用いることにより、0.009〜0.7 mg/cm2の濃度範囲注5)において、SDDの遠隔計測の可能性が示された。


遠隔計測における計測可能距離を向上させると共に、実がいしおよび現場への適用性を評価する。さらに、火山灰計測への適用を行う。

注1)レーザー光を測定対象物に集光することによりプラズマを発生させ、そのプラズマからの発光を分光することにより、測定対象物に含有されている元素の種類および濃度を測定する手法である。
注2)送電用支持物設計標準(JEC-127-1979)において、66 kV送電鉄塔の標準的な腕金高さが20 mとされている。
注3)理想的なレーザー光では、集光強度は集光距離の2乗に反比例する。また、受光量は計測距離の2乗に反比例する。このため、離隔距離10 mに対して20 mの計測では、信号強度が大幅に低下する。
注4)一般的な磁器がいしと同様の円盤状磁器製サンプル(直径68 mm)に、汚損物として並塩(NaClの純度が95 %以上)ととの粉を付着させ、Nd: YAGレーザーの第2高調波(波長:532nm)を照射した。
注5)例えば、変電所で使用するがいしの汚損は、0.01 mg/cm2以下の地域から0.35 mg/cm2以上の地域に分類されている。(電気協同研究、第69巻、第3号、2013)また、送電設備の汚損区分に関しては、最大想定SDDとして、0.038〜0.55 mg/cm2(海水のしぶきが直接かかる場合を除く)が想定されている。(電力中央研究所 送電機能研究委員会「500 kV送電に関する研究報告(その6)」、1969)
[Abstract]
We evaluated the performance of laser-induced breakdown spectroscopy (LIBS) for the application to the measurement of Salt Deposit Density (SDD) of porcelain insulators. A porcelain insulator sample with a glaze deposited with sodium chloride and Tonoko, one of polishing powders, that can simulate Non-Soluble Deposit Density (NSDD) was used as a target. First, the second-harmonic Nd: YAG laser pulses with energy of 15 mJ was focused on the sample to produce plasma by a lens with a focal length of 250 mm. The emission intensity ratio of Cl (837.59 nm) to O (844.64 nm) were linearly increased with SDD from 0.054 to 0.655 mg/cm2 with R2 value of 0.995-0.997. These results show that Cl can be a useful calibration curve for the measurement of SDD. Second, we demonstrated the remote measurement of SDD of the sample with a distance of 10 and 20 m from the laser system. Na (819.48 nm) emission intensity was monotonically increased with SDD up to 0.319 mg/cm2 for the measurement with a distance of 10 m and up to 0.612 mg/cm2 for 20 m. Cl (837.59 nm) emission intensity was monotonically increased from 0.047 mg/cm2 to 0.733 mg/cm2 for the measurement with a distance of 10 m. In the measurement with a distance of 20 m, the emission intensity was monotonically increased in the high density region up to 0.736 mg/cm2. Therefore, LIBS is promising for the remote measurement of SDD deposited on a porcelain insulator with the distance up to 20 m for all typical contamination levels in Japanese contamination classification of transmission and transformation equipment.
報告書年度 [Report's Fiscal Year]
2016
発行年月 [Issued Year / Month]
2017/07
報告者 [Author]

担当

氏名

所属

藤井 隆

電力技術研究所 高エネルギー領域

元木 浩平

東京工業大学

屋地 康平

電力技術研究所 高電圧・絶縁領域

江藤 修三

電力技術研究所 高エネルギー領域

堀田 栄喜

東京工業大学

末包 哲也

東京工業大学

杉山精博

防衛装備庁 陸上装備研究所

來山直弘

防衛装備庁 陸上装備研究所

キーワード [Keywords]
和文 英文
磁器がいし Porcelain insulator
遠隔計測 Remote measurement
レーザー誘起ブレイクダウン分光 Laser-induced breakdown spectroscopy
塩分付着密度 Salt deposit density
塩素 Clorine
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