電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V13003

タイトル(和文)

水温上昇による付着生物生息分布の変化―現場分布調査と文献情報による検討―

タイトル(英文)

Change of sessile organism habitat distribution by seawater temperature rising - Evaluation by field distribution survey and literature information -

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

地球温暖化に伴う発電所周辺海域の水温上昇により、冷却水路の付着生物の組成が変化し、付着防止対策などの変更が必要となる可能性がある。水温上昇に伴う付着生物の変化については、これまでイガイ類に関する若干の検討例はあるものの、将来の水温上昇幅の予測に基づき、付着生物全般の変化を検討した例はない。本研究では、日本各地の付着生物の分布と水温に関する文献調査、および北海道から四国沿岸までの分布現地調査から現況を明らかにする。また、付着生物への水温影響に関する文献調査に基づいて、今後の水温上昇に伴い予測される付着生物の変化を考察する。付着生物種と取水温度について、発電所14カ所へのアンケート調査注1)を行うとともに、四国沿岸域で付着生物分布の現場調査を行った。また、公的機関の水温情報も収集した。その結果、現在の発電所の主要な付着生物種は、北海道沿岸ではムラサキイガイ、キタノムラサキイガイおよびチシマフジツボ、伊勢湾から四国沿岸に至る海域ではムラサキイガイ、ミドリイガイ、タテジマフジツボおよびアカフジツボであった。2002年と2010年のアンケート調査結果や本研究の現場調査結果から、伊勢湾4ヶ所(F、H、J、K)、熊野灘1ヶ所(L)の発電所で熱帯原産の外来種であるミドリイガイが新たに付着し、四国の一部沿岸ではミドリイガイの分布が拡大しているが、海上輸送に伴う未定着域への新たな移入などの要因も考えられ、水温の上昇と明確に関連づけることはできなかった。また、主要付着生物の水温影響に関する文献103件を収集・整理し、生息水温を基に、14種を、27℃以上で斃死する北方系(生息水温: -1~26℃)、31℃以上で斃死する広温性(2~30℃)、10℃未満で斃死する南方系 (10~31℃)に分類した。温暖化シナリオA1B注2)から、100年後の北海道沿岸、および伊勢湾から四国沿岸の水温上昇を、それぞれ3℃、2℃と仮定し、水温影響の調査結果に基づいて、将来の分布の変化を予測した。その結果、北海道沿岸の水温(6~22℃)は北方系付着生物の生息範囲内であり、大きな影響はないと予測された。伊勢湾の水温(11~29℃)は広温性および南方系付着生物の生息範囲内であったが(表2)、冬季水温がミドリイガイの低温致死水温10℃を上回るため、越冬率の増加により分布が拡大すると予測された。また伊勢湾と播磨灘の夏季水温はムラサキイガイの高温致死水温29℃を超えるため、越夏率の低下により衰退が予測された。

概要 (英文)

Seawater temperature rising under global warming environment will change the habitat distribution of sessile organism biota attached to cooling water systems at power plants. In this study, we investigated the species composition reports of Japanese power plants and examined mussel species distribution in Shikoku by field survey, with collecting adjacent coastal water temperature records. We also examined the published literatures about water temperature effects on main sessile organism species to extract possible changes of these organisms caused by seawater temperature rising. The result showed the enhancement of green mussel biofouling to power plant cooling channel and coastal facilities under current warming condition. Biological waste generated from cleaning of the cooling water channel was also increased in high water temperature condition. Based on the global warming projection, the future water temperature rising will accelerate the expansion of green mussel. The evaluated future winter water temperature is higher than the cold lethal threshold, which makes green mussel being able to survive in winter and will cause the transition of species composition to green mussel.

報告書年度

2013

発行年月

2013/12

報告者

担当氏名所属

立田 穣

環境科学研究所 水域環境領域

坂口 勇

環境科学研究所

濱田 稔

中部電力株式会社 エネルギー応用研究所

杉本 正昭

関西電力株式会社 電力技術研究所

津野 雅俊

北海道電力株式会社 企画本部 総合研究所

キーワード

和文英文
地球温暖化 Global warming
付着生物 Sessile organism
発電所冷却水路 Power plant cooling channel
イガイ Mussel
フジツボ Barnacle
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