電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y08025

タイトル(和文)

電気事業者の資本構成に関する基礎的分析 -製造業と電力業の比較分析-

タイトル(英文)

A Fundamental Analysis on the Capital Structure in Japanese Electric Power Companies: A Comparative Study against Manufacturing Firms

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

本稿は一般電気事業者9社と製造業のうち大企業273社の1997年度から2006年度の10年間にわたるデータを用い,資本構成の決定要因に関する分析を行い,電力業の産業特性が資本構成に与える影響について考察した。本稿の分析結果から判明したことは,第一には,2000年3月に施行された小売自由化以降は電力業の産業特性は負債の水準に影響を与えていないことである。このことは,特に2000年以降の規制緩和によって資本構成に与える産業特性の影響が弱まった可能性を示唆している。第二には電力業の産業特性は先に述べたように時系列的には,負債の水準に固有の影響を及ぼさないようになってはいるものの,資本構成の重要な決定要因とされる有形固定資産比率に対しては独自の効果を与え,結果として資本構成にも影響を及ぼしているということである。電力業では電気事業法により一般担保付社債の発行が義務付けられており,制度的に倒産コストが低くなっているが,そうしたことが有形固定資産比率に電力業独自の効果を与えていると考えられる。第三には,外国人株主は近年の電力業の負債圧縮を製造業におけるよりも,一層望んでいるということである。この結果は,外国人株主は電力業が負債圧縮を進めることで企業価値向上が図れると考えていることを示唆している。また,電力会社の負債の圧縮は,企業価値向上を志向する株主の理解を得やすく,株価の向上を図れる可能性を示唆していることも指摘できる。第四には,近年の電力業の産業特性は収益性や投資機会,企業規模という資本構成の重要な決定要因に対して独自の効果を与えているわけではなく,それらが資本構成に与える影響は製造業と異なっていないということである。このことは,近年電力業において進展した規制緩和及び株主重視を説くコーポレートガバナンスの考えの普及が,電力業の産業特性を弱化させ,製造業との相違を少なくしていることの帰結であると考えられる。

概要 (英文)

The purpose of this paper is to examine whether and how the industrial characteristics of Japanese electric power companies affect their capital structures compared to the manufacturing firms after the deregulation in electric power industry and to present fundamental suggestions on the capital structure of electric power companies. Using debt-equity ratio as a proxy for capital structure, the author found that a positive effect of industrial characteristics of electric power companies on debt-equity ratio diminished after deregulation in 2000. In addition, the author found that an increase of the ratio of tangible fixed asset to total asset of electric power companies accelerates a debt financing compared to manufacturing firms. This result suggests that a regulation that requires issuing secured bond on electric power companies facilitates debt financing. To the contrary, the percentage held by foreign shareholders of electric power companies was negatively correlated to the debt-equity ratio. This means foreign shareholders of electric power companies think that their debt reduction leads to the firm value improvement.

報告書年度

2008

発行年月

2009/04

報告者

担当氏名所属

尾身 祐介

社会経済研究所 事業経営・電力政策領域

キーワード

和文英文
コーポレートファイナンス Corporate Finance
資本構成 Capital Structure
電気事業者 Electric Power Company
外国人株主 Foreign Shareholder
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry