電力中央研究所

報告書「電力中央研究所報告」は当研究所の研究成果を取りまとめた刊行物として、昭和28年より発行されております。 一部の報告書はPDF形式で全文をダウンロードすることができます。

※ PDFのファイルサイズが大きい場合には、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。 ダウンロードは1回のクリックで開始しますので、ダウンロードが完了するまで、複数回のクリックはなさらないようご注意願います。

電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

Y17002

タイトル(和文)

JEPXスポット市場における価格の長期予測手法の検討

タイトル(英文)

A comparative study of long-term price forecasting methods for the JEPX spot market

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

背景:
電力システム改革の進展に伴い、JEPX スポット市場における電力取引量は近年大きく増加している。市場取引が増大するにつれて、事業者はより大きな価格変動リスクに晒されることになる。そのような状況の下、電源の新設や維持・廃止の意思決定を適切に行うための将来収益の推計には、卸電力市場の価格予測が欠かせない。

目的:
将来シナリオを想定したシミュレーション分析で用いる価格の長期予測モデルを構築するための準備として、長期的な価格動向と強く関係する変数を探るとともに、JEPXシステムプライスの3ヶ年予測の精度に基づくモデル比較を行う。

主な成果:
2005年7月から2014年9月のデータに基づいて、統計モデル(ARIMAX)と機械学習モデル(NN)を推定し、それらを用いて2014年10月から2017年9月の3年間(36ヶ月間)のJEPXシステムプライス月平均値を予測して、以下の点を明らかにした。
1. 月平均価格の予測精度
ピーク価格とオフピーク価格で有効な説明変数は異なるものの、自己回帰項等で過去の価格変化を考慮することにより予測精度は改善しうる。どちらのモデルにおいても、3年先までの価格を平均誤差1円/kWh前後(価格水準の6~9%)で予測可能であり、この予測精度は、より短期間の予測を行った先行研究と比べて劣らない水準である。
2. 価格水準の長期的な動向を予測する際に有用な説明変数
前月に比べて、火力発電電力量が増加している月はピーク価格が上昇し、原子力・水力発電電力量が増加している月はオフピーク価格が低下するという結果が得られた。前者は短期限界費用の高い電源、後者は低い電源の稼働状況を示すため、予測モデルの推定結果は電源の運用特性と整合的である。また、この推定結果からは、火力電源の短期限界費用の大半を占める燃料価格の変動がピーク価格・オフピーク価格の変動にもたらす影響も合理的に説明できる。以上から、将来シナリオ想定における電源構成や燃料価格の設定は、価格水準の長期的な動向を説明する際に有用であると言える。
3. 計算コストと予測モデルの選択
機械学習モデルは複雑な構造をモデル化できるため、構造設計次第でさらなる予測精度の改善が見込まれるものの、設計の選択肢は多く、最適モデルの探索に時間がかかり、統計モデルに比べて計算コストが大きい。今回行った月次の価格予測では、統計モデルの予測精度が機械学習モデルを上回るケースも少なくないため、それぞれの得失に応じて使い分けを判断するべきである。

今後の展開:
様々なリスク要因に対して電力価格がどう変化するかという情報を高い精度で提供できるよう、予測精度の改善に加え、価格予測に有効な説明変数の探索を続け、その影響を示す。

概要 (英文)

This report investigates electricity price forecasting methods for monthly electricity system prices in the JEPX spot market. We focus on two models, the one based on an autoregressive integrated moving average with exogenous variables (ARIMAX) while the other based on an artificial neural network (NN). Based on these models, we predict peak and off-peak prices from October 2014 to September 2017 for 3 years to compare their prediction accuracy. As a result, we conclude that both models
can predict the prices with the prediction error around 1 yen/kWh (below 9%).
We demonstrate a positive correlation between the thermal power generation and the peak price, while the nuclear and hydroelectric power generations and the off-peak price have a negative correlation, which are consistent with the operational characteristics of power generators. In addition, the fuel price positively correlates with both the peak and off-peak prices. Therefore, our models reasonably explain the long-term price movement of the JEPX spot market.
The NN model is expected to further improve the prediction accuracy depending on hyper-parameters determined before calculation. However, its computational burden is extensively heavy requiring a quite long run-time to set the parameters optimally. In the meantime, the time needed by the statistical based models such as ARIMAX is considerably shorter. Furthermore the prediction accuracy of ARIMAX models is comparable to that of NN models. Therefore it should be considered to use different models depending on the merits and demerits of each model.

報告書年度

2017

発行年月

2018/03

報告者

担当氏名所属

井上 智弘

社会経済研究所 事業制度・経済分析領域

田中 拓朗

社会経済研究所 事業制度・経済分析領域

キーワード

和文英文
日本卸電力取引所 JEPX
卸電力市場価格 Wholesale electricity market price
電力価格予測 Electricity price forecasting
自己回帰和分移動平均 ARIMA
ニューラルネットワーク Neural network
Copyright (C) Central Research Institute of Electric Power Industry