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社会経済研究所 コラム

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COP23をどう理解すべきか
−協定細則の交渉に暗雲 アピール合戦が重要に−

電力中央研究所 社会経済研究所
 主任研究員 上野 貴弘

 11月6日から18日まで、ドイツのボンにおいて、気候変動枠組条約の第23回締約国会議(COP23)が開催された。日本での報道の多くはパリ協定の実施指針を巡る交渉が多少の前進を見せたが、日本は国内での石炭火力の新設や海外石炭火力への公的融資を批判されたというものだった。

 この報道内容はCOPに2つの機能があることの表れであり、COP23で起きたことを交えて解説する。

 COPの第一の機能は、交渉の場を与えることである。昨年のCOP22では、協定が早期発効したことを受けて、その実施指針を18年のCOP24までに採択することを決めた。今回のCOP23では、交渉の土台を作ることが目指され、非公式の文書が作成された。その内容はあらゆる提案をとりあえず紙の上に乗せたといったもので、COP21でも合意できなかった案が一部途上国から再提示され、掲載されるなど、COP21以前の状況に戻ってしまったような分野もあった。

 合意期限の前年に混沌とした状況に陥るのは毎回のことである。しかし、トランプ大統領が協定脱退の意向を表明し、途上国への資金支援を絞った影響から、先進国に歩み寄りつつあった一部途上国も支援を巡っては頑なな態度をとるようになり、先進国対途上国という対立構造が再燃した。この点は来年の交渉を進める上で気がかりである。

 COPの第二の機能は、様々な主体の取り組みをアピールする場を提供することである。近年のCOPでは、議長国の主導の下、テーマ別のイベントをシリーズ化して、中央政府、地方政府、民間団体など多様な主体の間での議論を促し、経験の共有を進めている。さらに主要国が国別パビリオンを設けて自国の取り組みをアピールし、各種団体もイベントを開催する。

 こうした場では具体的取組が取り上げられるが、今回のCOPでは、英国とカナダが主導して立ち上げた非石炭電力供給連合が特に注目された。既存石炭火力の全廃とCCS無しの新設中止を約束する連合体であり、全廃時期の目安を先進国は2030年、それ以外は2050年としている。この連合には、27の国家と地方政府が参加したが、西欧諸国とカナダの地方政府の参加が多く、アジア各国は不参加だった。開催地ドイツも参加を見送った。

 他方、米国政府は高効率化石燃料と原子力発電の役割に関するイベントを開催し、大統領府の担当者が講演したが、途中で環境団体の参加者が抗議の意を込めて突然歌いだし、集団退出するなど混乱した。日本批判はこのような雰囲気の中で環境団体等が行ったものだった。

 パリ協定採択以降、世界的な気候変動対策のフェーズが枠組み作りから実施へと移り、COPの2つ目の機能への注目が高まった。報道で取り上げられる頻度も上がっている。COPでは以前から環境重視のテーマに関心が集まりやすかったが、協定がプレッジ&レビューの仕組みを取り、実施促進手段として法的義務ではなく、社会的圧力に頼るようになったことも相まって、国を挙げた環境重視のアピール合戦の重要度が増した。

 つまり、この現象はパリ協定の本質であり、アピール合戦にどう向き合うかを考えるべき時に来ている。

電気新聞2017年12月12日掲載

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    2017年3月17日更新

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    2018年2月20日更新

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