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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (135)

欧州は配電事業の未来を
どのように構想しているのか?

 欧州では、エネルギーの脱炭素化を目指す動きの中、太陽光発電等の分散型の再生可能エネが下位の電力系統に大量に接続されるとともに、デマンドレスポンス(DR)や電力貯蔵といった需給の柔軟性に関する動きも進んでいる。これを受け、どちらかと言えば電気を「配る」存在であった配電は「電気の取引の舞台」へと変わりつつあり、その運用主体である配電系統運用者(DSO)にも変革が求められている。以下、2016年11月に欧州委が発表した制度改革提案の配電に関する部分と、それに対する関係者の反応について解説する。

【市場の促進主体としてのDSOの役割と責任】

 分散型電源に加え、需要家の市場への参加を保障する「積極的」な配電系統の運用主体であるDSOは「中立の市場ファシリテーター」であることが求められる。欧州委は、現行のアンバンドリング規定(法的分離)の原則は修正しないものの、調整力の調達や需要家データの取扱等の規定の中でDSOの中立性を確保すると述べている。関連して、各国規制当局の団体であるCEERは、現在アンバンドリング規定の適用が除外されている小規模DSOへの一層の中立性確保策が必要であるとしている。
 制度改革提案では、市場からの参入がないことを条件に、電力貯蔵設備やEV充電ステーションをDSOが所有・運用することを認めている。これに対し欧州電気事業連盟(Eurelectric)は、柔軟性を確保するための手段である電力貯蔵設備とEV充電ステーションは異なる取扱がなされるべきだと主張している。

【配電系統に対する投資と料金】

 Eurelectricの年次大会(2017年6月19日・20日)では、DSOが果たすべき役割に必要な投資を確実に回収するため、配電料金制度の変革を求める主張が多く聞かれた。欧州委も、DSOに十分な投資インセンティブを与えるため、配電料金に関するEU大のガイドラインを策定することを提案しているが、料金規制に対する各国の権限への不当な制約になるとの反論もある。

【EU大のDSO団体の設立】

 欧州委は、送配電の関係強化のため、送電系統運用者(TSO)の団体であるENTSO−Eに対応する組織として、EU大のDSOの団体(EU DSO Entity)の設立を提案している。この組織は、ENTSO−Eと協力しつつ、送電と配電の間の計画や運用の調整を図り、ネットワークコードの策定に参加する。配電網のデジタル化や、データの管理・保護、サイバーセキュリティ対応の中心としても位置づけられている。
 欧州委は、全て(約2,400)のDSOが参加することは非現実的として、参加資格をアンバンドリング規定が適用される大規模DSO(約200)に限定するとしている。これに対しEurelectricは、小規模DSOもネットワークコードに拘束されるのだから、策定に関与する権利を与えるべきであるし、新団体はDSOの利益代表ではなく、技術専門家の組織として位置づけられるべきであると主張している。

【パイプからプラットフォームへ?】

 Eurelectricは、年次大会の開催中に発表した「DSOの戦略ビジョン」の中で、需要家の期待に応えるため、DSOはビジネスモデルを「パイプ」型から「プラットフォーム」型に変革する必要があるとした。また、年次大会でも、DSOは大きなチャンスに直面しているという主張とともに、マイクログリッドなどの「プラットフォーム」上でのピア・ツー・ピアの電力取引の事例などが紹介された。
 しかし、紹介された事例では、配電系統そのものではなく、需要家が直接取引を行う場を「プラットフォーム」と称しているのではないかと思われる議論も見受けられた。また、DSOによる安定的な電気の供給が確保されていることを前提としつつ、需要家を含む市場参加者が、柔軟性の提供等を通じて安定供給の確保にどのように貢献していくのか、そのような状況における規制の役割とは何かという点について、見解の一致は見られなかった。
 今後、制度改革案の取りまとめに向け、欧州議会と閣僚理事会の場での議論が進められることになる。送電と配電が組織的にも分離しているという点では欧州との違いがあるものの、分散型電源の導入やDRの推進といった点では共通点のある日本にとって、配電事業の未来を考える上で参考となる議論がなされることを期待したい。

電力中央研究所 社会経済研究所 上席研究員
丸山 真弘/まるやま まさひろ
1990年入所。 専門は電気事業法制度論。

電気新聞2017年7月10日掲載

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