日本では、再生可能エネ電源の導入の拡大に伴い系統の空き容量が減少している地域がある。空き容量が無く、新規再生可能エネ電源の系統接続を先着順に受入れできない場合は、系統を増強し追加的に受け入れる。その際、系統増強には多額な費用と時間を要するため、既存系統の最大活用の観点から、現在、平常時に混雑が発生する系統で設備を増強せず、新たに電源接続を希望する事業者と合意の上、送電混雑等の系統制約逸脱時の出力抑制を条件に接続を認めることが検討されている。
一方、英国でも、再生可能エネ電源の導入を促進する中、系統側に少しでも電源を受け入れる余地があれば系統接続したいという発電事業者の要望に対し、一定の条件付きで発電設備の接続を認める制度(コネクト&マネージ(Connect&Manage:C&M)制度)が2011年より本格的に実施されている。
本稿では、日本ではあまり知られていない、欧州で先行する早期電源接続方策への理解を深めるために、英国のC&M制度を例に、その特徴について整理する。
【英国のコネクト&マネージ制度】
英国のC&M制度は、広域送電系統全体のセキュリティ等の維持に不可欠な信頼度基準を満たすために計画された増強が完了するまでの間、新規発電設備の早期系統接続を認めるというものである。ただし、新規発電設備に最も近い広域送電系統の接続点までのローカル系統の設備増強が完了していることが制度適用の前提とされる。
本制度の本格実施以降、2015年5月末までに1、769MWの再生可能エネ電源が早期に系統接続し、これは2015年末の総発電設備容量の約2%に相当する。ただし、C&M制度を利用し早期系統接続した電源(C&M電源)の約9割を洋上・陸上風力電源が占め、火力電源は含まれていない。
【早期系統接続による系統制約逸脱解消の仕組みと実際】
英国では、需要変動や電源の運転状況により発生する電圧逸脱、電力潮流の送電容量オーバー等の系統制約逸脱は、系統運用者であるNGCが行う需給調整メカニズムの一種である系統制約管理サービス(Constraints Management Services)により解消される。同サービス提供に伴う火力電源やC&M電源を含む風力電源などの発電調整の費用は系統利用者全体で負担する。
C&M電源の受入の代償として、信頼度基準を満たせず系統制約逸脱が発生する可能性は高くなる。英国ではC&M電源の増加に伴い系統制約管理サービス費用は増加している。NGCにより2014年度のC&M電源の出力に起因する調整費用は、約100億ポンドと推定され、需給調整メカニズムの総費用の約13%を占める。
【新規電源導入メリットとコスト負担のバランスを】
増強計画完了後、系統制約逸脱の発生頻度が低下し、調整費用も減少する。ただし、英国の制度では、系統利用者は、広域送電系統の信頼度基準を満たすために必要な増強費用に加え、一定期間であるにせよ、この調整費用も負担しなければならない。
日本で検討されている「日本版C&M」、すなわち送電系統を増強せず新規電源の接続を認め、新規電源接続後に生じる送電混雑解消のための調整費用の負担を系統利用者に求める際には、新規電源を受け入れることによるメリットが負担に見合うことの確認が重要である。
電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 上席研究員
岡田 健司/おかだ けんじ
1990年入所。博士(工学)。専門は電力系統工学
電気新聞2017年11月29日掲載
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