ゼミナール (182)
固定価格買取制度(FIT)により、電気料金に上乗せされている今年度の賦課金単価は2円95銭/kWhに達した。これは平均的な家庭用電気料金の約11%もの水準である。では、国民の再生可能エネ普及に対する認識や、賦課金の許容額はどの程度だろうか。本稿では、筆者らが昨年度から2回にわたり実施した、数千人規模での社会調査の結果を紹介する。
再生可能エネ普及には約8割が賛成を示した。他方で、その53%は電気料金への賦課金計上を知らず、36%は計上を知っているがその金額は知らなかった。残る11%は賦課金概算を知っていると回答したが、その中で約7割が現状の賦課金額が高すぎると考えており、妥当な金額とした人は3割に過ぎなかった。従って、賦課金自体の認知度を高めることは重要であるものの、認知されても現状の賦課金水準に対する受容性は低いと考えられる。一方、再生可能エネ普及に対する費用負担について、回答者全体の34%が負担したくないと思っていた(図)。負担を許容する残り66%に対し、国内普及のために費用負担してよいと選んだ再生可能エネの、許容額を賦課金割合として質問した結果、約7割が電気料金に占める賦課金の割合5%以下を選択した(図)。前述した賦課金額の認知有無により許容額の有意差はみられなかった。また、回答者の居住地で普及する場合であっても、許容額は同程度であった。
電力小売全面自由化に伴い、人々が電力会社や料金メニューを自由に選べるようになった。その選択の判断基準について筆者らの調査結果では、再生可能エネ比率が多い電源構成を選好する人が3割強に対し、電気料金が最も安いプランを重視する人が6割、お得なサービスを重視する人が4割程度であった。このことから、発電方法の選好よりも家計に直接影響を及ぼす電気料金水準の方が優位であることが伺える。その背景には、電気は電源構成に関わらず一定の質が保たれているため、人々が再生可能エネ由来の電気にメリットの実感が伴い難いことが考えられる。また、筆者らが2010年から実施してきた意識調査では、電源構成に対する認知度や興味は低く、主要電源が火力発電との正答率は毎回4割未満であることが示されている。この結果からも、人々の主な判断材料が身近な電気料金のみに依るものと示唆される。
以上を踏まえると、現状のペースで賦課金の増加が継続すれば、わが国の再生可能エネ導入目標や政策に対する国民の受容性は低下する可能性も想定される。また、今後更に賦課金が上昇し、電気料金全体が値上がりすれば、地球温暖化対策として重要な電化の進展に対しても、人々の選好の低下が危惧される。
政府は再生可能エネの主力電源化を掲げている。普及拡大は急務だが、人々が需要家としての当事者意識やメリットを感じなければ成し得ないであろう。コストダウンだけでなく、人々の社会心理的な障壁が再生可能エネ導入シナリオに及ぼす影響も考慮しながら、国の目標設定や施策を適宜見直していく必要がある。
電気新聞2019年5月22日掲載