社会経済研究所

ディスカッションペーパー

長期エネルギー需給見通しを前提としたアデカシー確保に関する定量的評価

  • 永井雄宇
  • SERC Discussion Paper 16001
  • Date:2016.05.16
   

要約

 

 本稿では、当所で開発した需給運用シミュレータを用いて、競争環境下で長期エネルギー需給見通し(以下、需給見通し)を実現する場合、どの程度の発電設備が販売電力収入により発電費用(資本費+運転維持費+燃料費+起動費)を回収できるかの評価を行った。具体的には、需給見通しに基づき電源設備構成、電力需要、再生可能エネルギーの供給量等を想定し、3種の燃料価格のシナリオ①2010年度想定、②2013年度想定、③2030年度想定について評価を行った。
 第1の結論として、競争環境下で年間販売電力収入のみで発電費用を回収できる発電設備の容量は、アデカシー(発電設備や流通設備等の計画外停止および運用上の制約を考慮し、需要家の要求する電力を供給する能力)を維持するには不十分となる。アデカシー不足容量は、卸電力価格が最も低いシナリオ①では約2,700万kW、LNG価格が上昇することで、相対的に卸電力価格が高くなるシナリオ②と③でも約1,300万kW発生してしまう。
 第2に、需給見通しを実現するためには、主に既存設備の維持を対象に実施されているドイツの戦略的予備力制度ではなく、新規LNGCCの費用未回収リスクも低減する施策が重要となる。需給見通しの発電電力量を前提とすると、2030年までに3,661万kWの新規LNGCCが必要となる。これに対して、販売電力収入のみでは費用回収が滞るため、新規LNGCC設備の約150~750万kWについては市場退出が懸念される結果となった。
 我が国では、競争環境下において十分な供給力を維持するための具体的な制度設計については未だなされておらず、このままではアデカシーの確保も需給見通しの達成も困難となってしまうことが懸念される。発電設備へ投資(リプレースや新設)が行われるような容量メカニズム制度を早急に導入し、発電設備の投資回収の確実性を高めることが重要である。

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免責事項

「社会経済研究所 ディスカッションペーパー」の記載において、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではありません。

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