社会経済研究所

ディスカッションペーパー

トランプ新政権と温暖化対策

  • 上野貴弘
  • SERC Discussion Paper 16002 ver.3
  • Date:2017.2.3
   

要約

 

 トランプ氏の大統領就任に伴い、米国の温暖化対策がどのように変化するのかを、2017年2月3日午前(日本時間)での情報をもとに考える。
 トランプ氏は選挙戦中に、オバマ政権が行政権限で進めてきた気候変動対策をほぼ全否定していた。当選後は温暖化対策に熱心なゴア元副大統領と面談するなど、柔軟な姿勢を示そうとしつつも、メディアとのインタビューでは、人為的な気候変動の存在を否定はしないものの、その寄与度には態度を留保した。パリ協定の扱いについても明言を避けつつ、温暖化対策による産業競争力への悪影響を指摘し、特に中国を名指しして競争上不利になることは避けたいとした。2017年1月のトランプ新政権発足後には、オバマ政権が進めた気候行動計画を撤廃するとの姿勢を再度示し、国産の天然ガスと石油の増進とクリーンコール技術の推進を掲げた。
 このようにオバマ前政権からの路線転向を鮮明にしているが、今後、温室効果ガスの排出規制など、具体的施策をどの程度緩和できるかは現時点では明らかではない。仮にトランプ政権がオバマ前政権の施策を全廃したいと考えても、できることには制度上の制約がある。特にオバマ政権期に正式決定したもの(火力発電所への排出規制(クリーンパワープラン)等)は行政権限で決めたものであっても、これを覆すには手間のかかる行政手続きが必要であり、さらに環境団体等が訴訟に持ち込むことが予想される。他方、検討段階に留まるもの(石油ガス部門の既存施設の排出規制等)は撤回が容易である。
 米国の温暖化対策は政権交代のたびに大きな路線変更を繰り返してきた。トランプ新政権はオバマ前政権が進めた温暖化対策を見直していくが、トランプ政権の路線にもいずれ揺り戻しが起こると考えられる。パリ協定のもと、全ての締約国は2020年に2030年目標を(再)提出するが、この年には次の大統領選挙もある。米国の状況がこの時にどうなっているかがパリ協定の将来を左右する。

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お知らせ

 本資料は著者が、2016年12月13日に発表した同タイトルのペーパーを、2017年2月3日午前(日本時間)までに得た関連情報をもとに更新したものである。主な更新点は以下である。

  • 閣僚人事に関する情報の更新(本文23頁)
  • 政権発足後にホワイトハウスのウェブサイトに掲載された政策方針を追記(本文24頁)
  • 閣僚人事に関する情報の更新(本文23頁)
  • 制度上の制約と取りうる手段について加筆(本文30〜34頁)
  • 乗用車のCO2排出基準について、オバマ政権が任期中に中間レビューを終わらせたことを追記(本文38頁)

 上記に加えて、その他の記述についても表現等を追記・微修正した。

免責事項

「社会経済研究所 ディスカッションペーパー」の記載において、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではありません。

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