社会経済研究所

ディスカッションペーパー

トランプ大統領のパリ協定脱退表明について

  • 上野 貴弘
  • SERC Discussion Paper 17001 ver.2
  • Date:2017.8.30
   

要約

 

 2017年6月1日に、トランプ大統領は大統領府で演説し、パリ協定からの脱退を表明した。また、8月4日には、ヘイリー国連大使が脱退の意向を国連事務総長に通告した。本稿では、大統領表明と国連大使通告の内容と意味合いを整理した上で、今後の論点を整理する。  
 トランプ大統領は、脱退表明の理由として、①中国・インド等に比べ、不公平な削減目標となっていること、②緑の気候基金に拠出していない国が多いこと、③憲法上の問題と法的責任の問題があることを提示した。同時に「米国にとって公平な条件で、パリ協定または全く新しい取り決めに再加入(reenter)するための交渉を開始する」とも発言したが、「再加入交渉」で何を得ようとしているのかを明確にはしなかった。また、協定脱退手続きには、協定28条1と2に沿った脱退(協定発効時から3年後(2019年11月4日)以降に脱退を通告でき、その1年後に脱退完了)と、28条3による脱退(親条約であるUNFCCCからの脱退)という選択肢があるが、どちらを採用するかを明らかにしなかった。  
 他方、ヘイリー国連大使による通告では、米国が再関与(reengagement)の適切な条件を特定できない限り、協定28条1に沿って脱退するとされた。脱退という結論は変わらないが、①28条1に明確に言及し、UNFCCC脱退の可能性に触れなかった点、②いったん脱退することを前提とする「再加入」ではなく、それを予断しない「再関与」という言葉を使った点、③交渉という言葉を使わずに、米国自身が適切な条件を見出せるかを脱退通告するどうかの条件とした点に、残留の可能性をにじませた。
 ただし、パリ協定に残留する場合でも、オバマ前政権が掲げた「2025年に2005年比で26〜28%削減」という目標は撤回される可能性が高い。政権内の協定残留派も、目標の撤回・引き下げを残留の条件としており、トランプ大統領自身も脱退表明時に前政権の削減目標を明確に否定したためである。

本文ダウンロード: 本文

お知らせ

 本資料は著者が、2017年7月24日に発表した同タイトルのペーパーを、2017年8月30日午前(日本時間)までに得た関連情報をもとに更新したものである。主な更新点は以下である。

  • ヘイリー国連大使の脱退意向の通告について追記(本文29〜34頁)
  • メディアにリークされた国務省公電から読み取れる交渉への示唆を加筆(本文38頁)

 上記に加えて、その他の記述についても表現等を追記・微修正した。

免責事項

「社会経済研究所 ディスカッションペーパー」の記載において、意見にかかる部分は筆者のものであり、電力中央研究所又はその他機関の見解を示すものではありません。

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