経済社会研究所

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No.39 論文要旨

原燃サイクルバックエンドにおける貯蔵過程の数理的考察 (750 KB)

A Mathematical Analysis of Storage in the Fuel Cycle Back-end System

[キーワード]
原燃サイクルバックエンド、使用済燃料、使用済燃料中間貯蔵、最適貯蔵期間、技術進歩

長野 浩司

使用済燃料中間貯蔵の意義と必要性を明らかにするため、プルトニウムリサイクル過程における貯蔵オプション選択の最適化問題の一般式を導出して解くことにより、各貯蔵オプションの貯蔵期間の選択を考察した。
具体的には、ある時点で排出された1単位の使用済燃料に着目し、それが排出されてから、再処理された後に回収されたプルトニウム(Pu)が再び原子炉に装荷され燃焼されるまでの時間範囲に関して、原燃サイクル構成(使用済燃料中間貯蔵、再処理、Pu貯蔵、MOx燃料加工、 MOx燃料貯蔵)の総費用とPu利用の効用についての最適化問題を定義し、各貯蔵オプションとその貯蔵期間の選択及び技術開発効果の観点からその最適条件を検討した結果、以下のことが示された。

(1) ある貯蔵オプションの貯蔵期間を1年延長することの是非は、a-1)貯蔵期間の1年延長による当該貯蔵オプションの費用増分、a-2)貯蔵以降の処理の実施が1年遅延されることによるそれら費用の現在価値の変動、a-3)実施までに1年研究開発期間が伸びることによる技術進歩(費用低減)効果、の三者の和として表されるシステム費用の増減と、b)貯蔵以降の処理から回収された有用物質のリサイクル利用により得られる便益の発生が1年先送りされることの損失との比較で決まり、両者が等しくなる貯蔵期間[x,y,z]が各々の貯蔵過程における最適な貯蔵期間であり、その和Tが最適なリサイクル時点を与える。

(2) もしリサイクル利用の効用が圧倒的に大きければ即時リサイクルが最適解となるが、Pu利用の効用は不確定な部分が大きい。Pu利用の効用を排除すれば、原問題は費用最小化問題に帰着し、公開されているコストデータを用いてその数値解を検討すると、3つの貯蔵オプションの中では使用済燃料の中間貯蔵がまず選択され、またこのときに貯蔵コストの関数形によっては貯蔵期間にある最適値が存在することがあり得る。再処理技術等について将来の技術進歩がより大きく期待できる場合には、使用済燃料貯蔵戦略の優位性はより強まり、またより早期の再処理の実施が正当化される。

(3) 使用済燃料を再処理せず直接処分する場合にも、原問題と等価な問題を定義することができ、研究開発等による処分費用の低減効果と貯蔵期間の延長に伴う追加費用が等しくなる時点Tが存在するならば、そのときのTが最適な貯蔵期間及び処分時点を与える。

財政政策は有効か? −マクロ経済と財政赤字について− (870 KB)

Are Fiscal Policies Still Efficient?
-On the Macroeconomy and Fiscal Deficit-

[キーワード]
財政政策、財政赤字、ケインジアン、新古典派、リカード中立性

加藤 久和

経済環境が再び悪化するなか、公共事業や減税による景気刺激策が議論されている。一方、巨額の財政赤字を抱えた財政を立て直すために、財政構造改革もまた進行中である。景気対策としての財政政策は、はたして現在もなお有効なのであろうか?近年のマクロ経済学では、財政政策の有効性に関して異なるいくつかの見解がある。
これを大別すると、ケインジアン、新古典派及びリカーディアンの三つになるが、本稿ではそれぞれの主張を整理するとともに、その他に最近注目されている政治経済学的な枠組みの中から財政赤字の原因を探るアプローチについて紹介を行なう。さらに、近年のわが国を対象とした財政政策の有効性に関する実証分析を行い、ケインジアン、新古典派及びリカーディアンそれぞれの主張の成立可能性を探る。

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