経済社会研究所

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No.40 論文要旨

民間貯蓄、高齢化及び社会保障 −わが国におけるライフサイクル仮説の検証− (1.1 MB)

Private Saving, Aging, and Social Security
-Testing the Life Cycle Hypothesis in Japan-

[キーワード]
ライフサイクル仮説、貯蓄率、高齢化、社会保障

加藤 久和

この論文の目的は、わが国の貯蓄率関数の分析を通じて、高齢化指標、所得成長及び年金資産を組み込んだ拡張されたライフサイクル仮説の実証分析を行うことである。
実証分析の結果、わが国においても高齢化及び社会保障の充実は民間貯蓄率に負の影響をもたらすことが明らかになった。また、推定された貯蓄率関数の回帰診断を行うとともに、各変数の時系列的性質を調べ、ライフサイクル仮説に基づいた貯蓄率関数の定式化には共和分関係があることを見出した。
さらに、インパルス応答関数の推定や共和分ベクトルの大きさから、高齢化や社会保障が民間貯蓄率に与えるインパクトの方向や強さを計測し、有意な結果を得た。

家計の消費構造変化に関する実証分析−ライフサイクル効果とコーホート効果− (1.1 MB)

Analysis of Structural Change on Consumer's Behavior
Life cycle change and intergenerational change

[キーワード]
消費構造、高齢社会、ライフサイクル、コーホート

若林 雅代

本稿では、消費構造の変化要因を家計のライフサイクルを通した消費行動変化(ライフサイクル効果)と世代による選好の違い(コーホート効果)とに分け、これらの効果の計量的把握を試みる。はじめに、家計調査の世帯主年齢別支出データを用いて擬似コーホート・データを作成し、消費選好パラメータに関するライフサイクル効果の存在を検証する。続いて、ライフサイクル効果を取り入れた消費関数を推定し、各費目への支出がライフサイクルを通じてどのように変化するかを分析する。

物質規制方式の原子炉等規制法への適用可能性について (718 KB)

An Applicability of Material-based Regulations on the Law for the Regulations of Nuclear Source Material and Reactors

[キーワード]
原子炉等規制法、事業規制方式、物質規制方式

田辺 朋行

わが国の原子力規制の中核をなす原子炉等規制法は、原子力開発利用行為を、核燃料サイクルを構成する各事業・行為等に分類し、その各々に対する許認可を通じて規制を加える、という事業規制方式を中心として構成されており、諸外国と比較した場合のわが国の特色の一つとなっている。
この方式による規制は、原子力開発利用の初期の段階では、効率的な規制方法であったと考えられる。しかしながら、近年の内外における原子力情勢の変化は、事業規制方式を中心とする現在の規制体系に様々な問題を生じさせつつある。
本研究では、諸外国の原子力法制において採用されている物質規制方式の考え方等を参考に、上の問題点を解決する方法の一つとして、原子炉等規制法の「核物質等の使用等に関する規制」の中に、現在は法解釈上認められていない、継続的な事業行為等を対象とする、新しい"使用"のカテゴリーを創設する、という法改正措置をとることが、現実的な選択肢として考えられ得ることを示した。

企業グループにおける関係会社の自立に関する実証分析−DEAの適用による評価と要因分析− (1.4 MB)

Management Evaluation and Factor Analysis of Subsidiary Companies Using Data Envelopment Analysis

−社会基盤技術の環境性評価手法の開発−

[キーワード]
企業グループ、関係会社、連結財務諸表、DEA、要因分析

蟻生 俊夫

企業会計制度の改革に伴い連結財務諸表の連結対象会社の範囲は拡大し、電気事業を含む日本企業において、今まで以上に関係会社の果たす役割を明確にすることが望まれる。この関係会社の役割は、自立やグループ貢献、親会社支援といった機能に分類できる。そして、上場企業の親会社と連結ベース双方の売上高や総資産、当期純利益などの経営指標をもとにDEAを適用することで関係会社の自立の度合いを計測した。
その結果、経営多角化や国際化に積極的な企業グループでは、関係会社の自立度が高い状況を確認できた。加えて、現在、連結対象子会社の少ない電気事業では、他産業に比べ関係会社の規模の拡大に改善余地があるものの、会社数を考慮すれば相対的に優位な状況にある点を指摘した。
また、関係会社の自立度に対する要因分析をしてみると、連結会計処理に米国流のSEC方式を採用している、親会社の主力事業に規制がない、関係会社がある程度の規模を確保している、などと関連が深いことを明らかにした。

日米電気事業の経営効率比較分析 −パラメトリックアプローチの応用− (875 KB)

A Comparative Analysis of Inefficiency Between U.S. and Japanese Electric Utilities:An Application of Parametric Approach

[キーワード]
技術効率性、配分効率性、費用関数

服部 徹 / 筒井 美樹

本稿は、パラメトリックに推定した費用関数をもとに、日米電気事業の経営効率性を推計し、比較分析したものである。経営効率性は技術効率性と配分効率性とに分けて推計し、それらが総費用や要素需要にもたらす影響について分析を行った。
データには、DEAを用いて日米電気事業者の経営効率性の計測・比較を行った北村・筒井(1997)と同じものを利用し、異なる手法によって同じ様な結論が得られるか否かについても確認した。その結果、日米の電気事業者の技術条件が同じであることを前提とすれば、日本の電気事業者は米国の電気事業者に比べて高い技術効率性を達成しており、その差は統計的に有意であることが明らかになった。
また、配分効率性に関しては、日本では資本と労働の過剰使用の傾向が認められ、米国では労働の過剰使用および資本の過小使用の傾向が認められた。技術非効率と配分非効率によって生じる追加的費用の割合は、米国が日本に比べて高くなっているが、配分非効率だけをみると日本が米国に比べて高くなっている。
本稿のこのような分析結果はDEAによる分析結果ともほぼ整合的であった。

マークアップ率の計測について (636 KB)

A New Approach to Estimating the Mark-up over Marginal Cost

[キーワード]
マークアップ率、規模の経済、組織の短期固定性、短期固定費用

白井 誠人

本稿では、新たに開発されたマークアップ率(価格と限界費用の比率)の推計方法と日本産業への適用結果について報告する。推計式は、組織の短期固定性に基づく短期生産関数からオイラーの法則を用いて導出されるもので、独立変数に生産性変化率を含まない点に特徴がある。
推計の結果、推計が適用可能な日本の産業は、有意に不完全競争の状態にあることが示された。

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