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日本経済と電力需要の短期予測

社会経済研究所が独自に開発した「マクロ計量経済モデル*」を用い、日本経済および販売電力量の短期予測のシミュレーション分析を実施しています。 電気事業に関連する広範な研究活動を通じた社会貢献の一つとして、わが国経済の短期予測に継続的に取り組んでおります。

*マクロ計量経済モデルの詳細は、電力中央研究所報告「Y12032 電中研 短期マクロ計量経済モデル 2012−財政乗数の変化と震災後の節電量の推定−」をご覧ください。

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平成27年12月11日 公表

2015〜17 年度日本経済と電力需要の短期予測(2015 年12 月)
−来年度は消費増税前の駆け込みも加わり民需中心の回復へ−


日本経済の現局面と標準予測

・12 月8 日に公表された2015 年7〜9 月期の実質GDP(2 次速報値)は前期比0.3 % 増(年率1.0 % 増)と2 四半期ぶ りの増加となった.項目別にみると,公共投資(前期比1.5 % 減)は減少したものの,民間消費(同0.4 % 増),住宅投 資(同2.0 % 増),設備投資(同0.6 % 増)などの民需と,輸出から輸入を控除した外需(同寄与度+0.1 % pt)が増加 した.しかし,依然として,民間消費と設備投資の回復力は弱く,国内景気の現状は足踏み状態にある.

・予測期間をみると,15 年度後半は,雇用・所得環境の改善により,民間消費が増加傾向で推移するものの,14 年度補正 予算の効果一巡による公共投資の息切れ,世界経済の先行き不安に伴う設備投資の先送りなどから,実質GDP は横ば いで推移する.15 年度通年では,14 年度実績の前年度比1.0 % 減のあと,同1.0 % 増(寄与度:内需+0.9 % pt,外 需+0.1 % pt)と緩やかな回復にとどまる(表1,図1).

16 年度の実質GDP は前年度比1.4 % 増(寄与度:内需+1.4 % pt,外需-0.0 % pt)と2 年連続して増加する(表1, 図1).項目別では,公共投資(前年度比0.6 % 減)が3 年連続して減少するが,消費税率引き上げ前の駆け込み需要に より,民間消費(同1.6 % 増)と住宅投資(同4.4 % 増)が増勢を強めるほか,企業の増益持続と15 年度から繰り延べ られた設備投資の顕在化により,設備投資(同1.9 % 増)が増勢を強める.外需は,駆け込み需要による輸入の増加が, 世界経済の回復による輸出の増加を上回り,僅かながら3 年ぶりに減少する.17 年度の実質GDP は,消費増税後の反 動減,実質所得減少の影響から前年度比0.4 % 減(寄与度:内需-0.7 % pt,外需+0.3 % pt)と3 年ぶりの減少となる.

・11 月26 日,政府は「一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策」を公表した.中長期的な経済成長に働きかける施策が 中心とみられるため,標準予測では本対策の効果は織り込んでいない.また,予測のリスクとして,中国経済が大きく失 速する場合,米国の利上げが行き過ぎる場合,過激派組織「イスラム国」によるテロが世界各地に拡大する場合が挙げ られる.こうした場合には,世界貿易および国際金融の収縮などの動きを通じて,日本経済や電力需要に悪影響が及ぶ.

表1:日本経済の標準予測
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図1:実質GDP(前年度比寄与度)

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図2:生産指数・大口電力(前年度比)

販売電力量の標準予測と気温シミュレーション

(1) 販売電力量の実績と予測

15 年度上期の販売電力量(10 社計)は前年度比1.9 % 減の3,958 億kWh と3 期連続の減少となった.内訳をみ ると,電灯需要が同0.1 % 減の1,233 億kWh,電力需要(電灯除く販売電力量)が同2.7 % 減の2,726 億kWh で あった.6 月から7 月上旬にかけての気温が前年に比べ低めに推移したため,冷房需要が減少し,業務用を中心に 電力需要が大きく減少した.一方,電灯需要は検針日数が前年に比べ長かったことなどから前年並みにとどまった.

・予測期間をみると,15 年度の販売電力量は,日本経済の標準予測(表1),前年並みの気温を前提として,前年度 比1.7 % 減の8,094 億kWh,5 年連続の減少となる.経済の停滞と電気の相対価格の上昇を反映し,電灯,電力需 要はそれぞれ同0.5 % 減,同2.2 % 減となる.16 年度の販売電力量は,景気の回復と生産の活発化により同1.0 % 増と6 年ぶりの増加,内訳では,電灯,電力需要はそれぞれ同0.6 %,同1.2 % 増加する.17 年度の販売電力量は 同0.7 % 減と経済の落ち込みから再び減少する.内訳は,電灯需要が同1.4 % 減,電力需要が同0.3 % 減となる.


(2) 販売電力量の気温シミュレーション

・上記の標準予測では,気温は前年並みを想定したが,ここでは16 年度が「猛暑(10 年度)・厳冬(11 年度)」ある いは「冷夏(09 年度)・暖冬(06 年度)」となる場合の電力需要への影響を試算した.

猛暑・厳冬ケースでは,販売電力量は標準予測の前年度比1.0 % 増から同2.8 % 増(標準予測比1.8 % pt 上昇)へ 伸びが高まる(表2,図4).電灯需要は同0.6 % 増から同3.3 % 増(同2.7 % pt 上昇),電力需要は同1.2 % 増か ら同2.5 % 増(同1.3 % pt 上昇)へ伸びが高まる.冷夏・暖冬ケースでは,販売電力量は標準予測比1.4 % pt 低 下の前年度比0.4 % 減,電灯需要は同2.2 % pt 低下の同1.6 % 減,電力需要は同1.0 % pt 低下の同0.2 % 増とな る.気象条件によって,販売電力量は6 年連続の減少となる可能性がある.


表2:販売電力量の標準予測と気温シミュレーション
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図3:販売電力量(前年度比寄与度)

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図4:販売電力量の気温シミュレーション(前年度比)

シミュレーション分析

 以下では,電中研短期マクロ計量経済モデルを用いて,政府が公表した「一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策」の うち,賃金の引き上げや法人実効税率の引き下げが実現する場合の影響を試算した結果を紹介する.加えて,世界貿易が 縮小する場合,原油価格が変動する場合など,前提条件が標準予測とは異なる場合の感度分析の結果を紹介する.

(1) 政府による賃上げの要請・法人実効税率の引き下げの効果

・「一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策」は,9 月24 日の安倍首相の自民党総裁再選後の会見で示された「新3 本の矢,すなわち,1 希望を生み出す強い経済(名目GDP 600 兆円),2 夢をつむぐ子育て支援(希望出生率1.8), 3 安心につながる社会保障(介護離職ゼロ),の具体化という位置づけである(図5).

・ここでは,短期に効果が現れることを意図しているとみられる,名目賃金の引き上げ(労働需給や労働生産性の変化 を考慮した自然体の賃金の変動に追加して賃金水準の1 % 分を上乗せ),および,法人実効税率の引き下げ(2 %, ここでは,税率引き下げ自体の効果を測るため,財源は国債発行を想定)が実現した場合の経済効果を試算した.

賃金1 % 引き上げの実質GDP への効果(表3,図6)は,16 年度が標準予測比+0.1 %,17 年度が同+0.0 % と, 小幅かつ短期に終わるという結果が得られた.内訳では,家計所得の増加により民間消費(標準予測比+0.2 %,+0.0 %)や住宅投資(同+0.4 %,+0.5 %)など内需が増加するが,同時に,国内企業物価(同+0.1 %,+0.2 %)や輸出 価格(同+0.0 %,+0.1 %)の上昇を通じて,輸出競争力が低下し,外需減少のマイナス影響が次第に大きくなる.

法人実効税率2 %(年間1.2 兆円規模)の引き下げ(表3)は,税引き後利益の増加を通じ設備投資(同+0.1 %) を増加させる.近年,企業の投資性向の低下により法人税減税の経済波及効果は小さくなっており,実質GDP は 0.1 % 未満の増加にとどまる.なお,財源には外形標準課税の拡大を活用する可能性が高く,短期的にはマイナス影 響が生じる可能性があるが,中期的には不採算セクターの新陳代謝を促すというプラス効果が生じる可能性もある.


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図5:一億総活躍社会の実現に向けた緊急対策
注:第3 回一億総活躍国民会議(15 年11 月26 日開催)配付資料「一億総活躍社会の実現に向けて緊 急に実施すべき対策(案)」を参考に作成した.

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図6:名目賃金引き上げ要請の波及経路
注:図中の値は17 年度の標準予測との乖離率である.

表3:名目賃金引き上げ要請・法人税引き下げの影響
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(2) 政府による賃上げの要請・法人実効税率の引き下げの効果

1.実質世界輸入の減少:中国経済の失速,米国での利上げの行き過ぎなど,世界経済が標準予測よりも悪化するよ うな場合である.ここでは,16 年度の実質世界輸入が,標準予測比約7 % 減少する場合の影響を試算した.

2.訪日外客数の減少:2014 年度の訪日外客数は前年度比33.6 % 増の1,467 万人,15 年度は上期で1,000 万人を越 えた.16 年度の訪日外客数は2,370 万人と見込んでいるが,それが半減した場合の影響を試算した.

3.原油価格の大幅な変動:標準予測では,16 年度の原油価格は1 バレル50 ドル前後で推移し,通年で前年度比2.5 % 低下の同53.1 ドルになると想定した.ここでは,上下に50 % 変動した場合の影響を試算した.

4.為替レートの大幅な変動:標準予測では,16 年度の為替レートは1 ドル122.4 円と横ばいで推移する見込みであ る.ここでは,その水準から10 円ほど円高,および,円安となった場合の影響を試算した.


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図7:前提条件の標準予測との差異
注:日本を除く実質世界輸入はIMF「IFS」から当所作成,その他の出所は,日本政府観光局「訪日外客数の動向」,日本銀行「国際収支統計」「金融経済統計月報」である.いずれも15 年度以降は当所による予測値.

表4:名目賃金引き上げ要請・法人税引き下げの影響
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なお、予測の詳細はこちらをご参照下さい。

本件に対するお問い合わせは、下記へお願いいたします。
電力中央研究所 社会経済研究所 (担当:林田、間瀬、浜潟)電話:03-3201-6601
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