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社会経済研究所 研究資料

社会経済研究所の研究成果のうち、速報・データ集を「研究資料」としてご提供しております。 2016年度より年度別に、順次PDF版(無料)を掲載しますので、ご活用ください。

研究資料 詳細情報 Detailed Information

報告書番号 Report Number
Y17501
タイトル Title
2050年までの太陽光発電・風力発電の将来コストに関する考察
概要 Abstract ※図表や脚注は「研究資料全文」に掲載しております

背 景

 2016年5月に閣議決定されたわが国の「地球温暖化対策計画」では、2050年までに80%の温室効果ガス排出削減を目指すとされ、この目標に向けた「長期戦略」について近年議論が行われている。 目標の実現を達成する手段として、太陽光発電(Photovoltaics: 以下、PV)と風力発電が期待されている。 これら技術の将来におけるコスト評価については様々な研究があるが、それらを同じ基準で比較した検討は十分になされていない。

目的

 PVと風力発電の将来のコストを推計している既往研究について、推計条件(基準年度、為替)を整理した上で比較を行い、 その資本費の推計値を政策評価に用いる際の留意点を示すことを目的とする。 なお、コストの代表的な指標としては、資本費や発電量あたりのコストを示す均等化発電単価(Levelized Costs of Electricity: 以下、LCOE)があるが、 LCOEは運転期間、割引率、設備利用率などに依存するため、本研究では資本費(設備費・工事費・土地造成費・接続費の合計)を指標として用いた。

主な成果

1. 主要な将来コストの推計手法を三種類に分類し、特徴と課題を整理

 PVと風力発電の将来コストの推計に関する71件の学術論文・機関資料をレビューし、整理した。 将来コストの推計の主な手法として、(a) 過去の生産量とコストの関係に基づく学習曲線、(b) 各要素のコスト削減ポテンシャルを積算するボトムアップ法、(c) 専門家への聞き取り調査、が挙げられる。 これらの手法の特徴と課題に加え、推計値に基づく政策評価における留意すべき点を整理した(表1)。 各手法はいずれも手法上の課題を有し、将来的に実際のコストとの乖離が生じる可能性もあることから、政策評価にコスト推計結果を用いる場合には、事後に推計値と実際のコストを比較し、コスト目標を繰り返し見直すことが必要である。

2.文献レビューに基づく将来の資本費推計値のとりまとめ

 PVと風力発電の将来コストの推計に関する文献のうち、2030年以降の資本費を掲載し、かつ推計の手法や諸元が記載されている文献(PVが10件、風力発電が5件)を比較対象とした。 これらの文献の推計値を、2016年基準の実質価格へ換算し、2016年の為替レートを用いて米ドル(USD: 以下、$)で整理した(表2)。 以下は、長期戦略の対象となる2050年の資本費を推計している文献(PVが4件、 風力発電が1件)に対する、推計値の比較により得られた結論である。

(1)PVの2050年の資本費の最小と最大は学習曲線により推計されたもので(非住宅用の最小は学習曲線とボトムアップ法との併用)、その値は0.3〜1.3$/W(非住宅用)、0.6〜1.7$/W(住宅用)である。わが国における2016年のPVの資本費(非住宅用:2.7$/W、住宅用:3.3$/W)と比較すると、おおよそ半額以下に低下することを示している。

(2)風力発電の2050年の資本費は学習曲線により推計されたもので、その値は、1.4$/W(陸上)、1.9$/W(洋上/着床)である。陸上風力に対しては、わが国における2016年の資本費(2.6$/W)と比較すると、おおよそ半額以下に低下することを示している。ただし、この文献の2030年の資本費の推計値は、陸上、洋上/着床のいずれについても2030年の資本費の推計値を掲載している文献の中の最小値であることから、楽観的な推計と捉えるべきである。

(3)上記(1), (2)で示したPVと風力発電の資本費の低減は、わが国において必ず達成しうるものではないことに十分に留意する必要がある。最小値はいずれも国際価格の推計値だったが、わが国においては、台風などの自然災害対策が必要になる上、地形の都合から土地造成が必要となるケースが多い。現状のPVや風力発電の国内価格は、国際価格の1.5倍であることも踏まえると、将来国内価格が国際価格に収斂することは、楽観的な想定と捉えるべきである。

3.今後のコスト推計においては、電力システム全体でのコスト評価が重要

 PVや風力発電といった自然変動電源(Variable Renewable Energy: 以下、VRE)の発電コストを評価する場合、LCOEがカバーするプラントレベルのコスト以外のコストを考慮する必要がある。 LCOEに含まれないコストの項目としては、(1)Profile Costs(供給能力維持費用・供給過剰対策費用) (2)Balancing Costs(需給調整費用) (3)Grid-related Costs(系統対策費用)などがある。 VREの大量導入時は、これらの費用も含めた電力システム全体でのコストでの評価が重要である。

報告書年度 Report's Fiscal Year
2017年度
発行年月 Issued Year / Month
2017/9
報告者 Author
尾羽 秀晃
朝野 賢司、永井 雄宇
キーワード Keywords
再生可能エネルギー、太陽光発電、風力発電、コスト、長期戦略

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