平成12年12月18日
財団法人 電力中央研究所
2000・2001年度の短期経済見通し

―企業部門依存の片肺飛行が続く―


 当所は、今秋発表された新基準SNA統計、95年基準データにもとづき新「電中研短期マクロ計量モデル」を構築し2000・2001年度の短期経済見通しを行ないました。その主なポイントは以下の通りです。


1. 2000年度の日本経済は、輸出の好調と設備投資の回復から2.0%成長を見込む(旧ベース政府経済見通し1.5%)。2001年度は、海外経済の減速を背景に輸出の伸びは鈍化するものの、設備投資が増勢を強め、2.1%の成長を見込む。この間、民間消費は低迷を続け、財政需要は減少する。
2. 2001年度の海外および政策環境は比較的良い。やや減速するが順調な海外経済、原油価格の下落、金融緩和の持続といった良好な環境のもとで、
@設備投資は情報関連産業がリードして今年度プラスに転じたが、2001年度にはITユーザーへの拡大や資本コストの低下などから、全体としてさらに増勢を強める、
A輸出は米国経済の減速などを背景に伸びは半減するものの、引き続きIT(情報技術)関連ハードの世界への供給基地として比較的好調に推移する、
B民間消費は、所得の伸び悩みや雇用不安の持続により一進一退の動きを続ける。雇用の改善は遅れ、失業率は4.7%と高水準が続く、
C公的固定資本形成は10月の経済対策による上積みはあるものの、地方の公共投資の抑制基調から減少する、

などから、成長は引き続き企業部門に偏った持続力に欠けるものとなる。家計部門への回復の波及は期待できず、いわば企業部門依存の片肺飛行が続く。

今後の不安要因としては、米国経済の急減速、それにともなう世界貿易の増勢の鈍化がある。仮に2001年1-3月期から世界貿易量が標準ケース比5%減少する場合には、2001年度の経済成長率は1.8%に低下する。

以上

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「補足資料」

1.現況と今後の景気をみる上でのポイント

 12月13日発表の日銀短観では、企業経営者(大企業製造業)の景況感は、輸出の頭打ち、日本の株価の低迷などをうけて2年ぶりに横ばいにとどまり、先行きについて慎重な見方を示した。また、業況判断DIは、中小企業製造業や非製造業では改善しつつもマイナスを続けていたが、これも今回足踏みしている。

 月次統計をみても、99年4月の景気転換点からの各種指標の改善は生産・企業収益など企業・供給サイドのものが中心であったが、秋口以降、輸出数量指数が頭打ちする一方で、新車効果もあって自動車販売がやや明るさを取り戻すなど基調の変化ともとれる動きもみられる。このような中で、産業用大口電力需要は10月は前年比2.6%増と15ヶ月連続で前年水準を上回った。

 今後の景気のポイントは、@米国経済・アジア経済の行方、A設備投資の行方、B民間消費など家計需要の回復の有無、などについてどうみるかという点にある。


2.予測の標準ケース

(1)予測の前提条件
 今回の予測は以下のような外生的な条件を前提として行なった。

1)海外経済2001年度の海外環境をみると比較的良好な状況が続く。米国経済はこの秋から調整に入った模様ながら3%台の成長、EUも3%強、アジア経済も引き続き6%程度の成長を続け、その下で実質世界輸入(貿易数量)は8%程度へ鈍化する。原油価格(入着CIFベース)も、OPEC等の増産効果から下落に転じ、2000年度平均27.7$/bから2001年度には23.7$/bに低下する(表1)。
2)金融政策金融の超緩和基調は引き続き維持される。
3)財政政策2001年度一般会計当初予算ベースでの公共事業費を前年度比4%減少、また2000年10月の「日本新生のための新発展政策」に織り込まれた社会資本関連投資の追加分を地方財政の悪化も勘案して真水ベース3兆円と見込んだ。その結果、名目公的固定資本形成は2000年度の-1.4%に続き2001年度には-2.8%と減少する(表2)。

(2)予測の概要
 このような前提のもとで、電中研短期マクロ計量モデルを用いて行なった2000・2001年度予測の標準ケースは以下の通りである(表3)。

 実質国内総生産(GDP)は、99年度1.4%増加のあと、2000年度は、輸出の好調と設備投資の持ち直しから2.0%成長を見込む(政府経済見通し1.5%)。2001年度は、やや減速するが、順調な海外経済、金融緩和の持続という比較的良好な環境のもとで、設備投資が増勢を強め輸出も比較的好調に推移し、2.1%の成長が見込まれる。しかし、民間消費は低迷を続け、公的投資は減少する。雇用は改善せず、失業率は4.7%と高水準での横ばいが続く。為替レートは、経常収支黒字の高水準が続くものの、日米金利差の拡大などを背景に、円安気味に推移し、2001年度平均で113円程度となる。

 2001年度の日本経済を取り巻く環境は比較的良好である。米国経済は株価調整を受けて3%台の成長に減速するが新政権のもとで政策の自由度は大きい。EUはこれまでのユーロ安の下での輸出の好調が内需に波及しており、3%強の成長が可能である。アジア経済も6%程度の成長が可能とみられる。このような比較的良好な海外環境のもとで、国内の政策環境も財政はやや引き締められるものの、金融緩和は持続し、比較的良好な状況が続く。

 以上のような外部環境のもとで、
@設備投資は情報関連機器、IT関連素材、金融関連業種がリードして2000年度にはプラスに転じたあと、資本コストのさらなる低下や企業収益の拡大から2001年度には非製造業を含むITユーザー業種など、規模別には中堅・中小企業へも回復の裾野を広げ、さらに増勢を強める。
A輸出はIT関連ハードの世界への供給基地として前年の2桁増加から伸びは低まるものの好調に推移する。アジア・米国とのIT関連素材の水平分業の拡大が続く中でも輸出基地の地位は揺るがない。
 これら企業サイド、供給サイドがリードして景気は緩やかながら拡大するものの、GDPの過半を占める民間消費、2割強を占める財政需要には景気牽引力は望めない。すなわち、
B民間消費は所得の伸び悩みのもとで、雇用不安も引き続き残るため一進一退の動きを続ける。
C公的固定資本形成は10月の新生経済対策による上積みはあるものの、公共投資の抑制基調から減少する。なお、新生経済対策による社会資本投資関連の積み増しは、実質GDPを2000年度0.3%、2001年度0.7%押し上げ、来年度の成長率を0.4%程度引き上げる(表4)。

 また、経常収支黒字は2000年度14.1兆円(対名目GDP比2.7%)から、2001年度は15.3兆円(対名目GDP比2.9%)に増加する。
 為替レートは、経常収支黒字の増加にもかかわらず、日米金利差の拡大から、やや円安気味に推移し、2001年度平均で113円程度となる。
 失業率は4.7%程度の高水準が続き雇用面は引き続き厳しい状態が続く。金融業界・産業界のリストラクチャリング・再編の大きなうねりと、情報サービス業、パート中心の労働需要などの求人増とのマッチングが引き続き課題となる。
 物価は円安基調ながらディスインフレの様相を示す。

 以上より、今後の成長は世界的なIT技術革新に支えられた企業サイドの需要が主導する緩やかなものとなる。いわば「企業部門依存の片肺飛行」と言えよう。家計部門に成長の果実が配分されるには、なお暫く時間を要しよう。

3. シミュレーション分析表5@〜A)

海外経済、為替レートなどの外的要因の変動に伴って2001年度の日本経済がどのような姿を示すかを電中研短期マクロモデルでシミュレーションを行なった。主な結果を表5に示す。

(1)海外経済急減速ケース(2001年1-3月〜、表5@)

 今後の不安要因としては、米国経済の急減速、金利の引き下げ、それにともなうアジア経済の成長鈍化、世界貿易の増勢の鈍化がある。米国長期金利が1%引き下げられ、2001年1-3月期から世界貿易量が標準ケースよりも5%減少する場合には、輸出が2001年度には1.6%減少し、その内需へのマイナス影響が加わって実質GDPは標準ケース比0.28%低下する。経常収支黒字は0.5兆円(3.3%)減少する。

(2)10%円高ケース(2001年1-3月〜、表5A)

 2001年1-3月から、米国株価下落などを契機としてドル安、円高が急速に進み、標準ケースと比較して10%(約11円)の円高が持続するケースである。

 シミュレーション結果は、価格要因から純輸出が減少し、その効果が内需にも波及して、実質GDPは2001年度には0.33%(1.8兆円)減少し、成長率は1.7%となる。

以上

(2000.12.14 短期予測チーム、門多治(文責)、星野優子、若林雅代、宮崎浩伸)


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