Michael Grubb(マイケル・グラブ)氏の記者会見の概要

平成13年 10月29日
財団法人 電力中央研究所



 日本側関係者との打ち合わせのため来日中のマイケル・グラブ氏(英インペリアル・カレッジ・ロンドン教授)によるCOP7の見通し、京都議定書の批准、発効、排出権取引などについての記者会見(レクチャー付き)が、温暖化問題の国際動向に詳しい当所経済社会研究所の杉山 大志主任研究員の逐語訳により行われ、活発な質疑応答があった。

マイケル・グラブ氏


日 時 : 平成13年10月24日(水) 16時〜17時
場 所 : 経団連会館 11階 1102会議室
内 容 : COP7の見通し、京都議定書の批准、発効、排出権取引、日本の役割、ヨハネスブルグサミットへの見通しなど
言 語 : 英語(杉山による逐語訳)
 
レクチャー
概 要 :
1.欧州連合の批准プロセスに関する合意について  (参照:EU agreed・・・)
  • 欧州連合は昨日10月23日に、リオ+10(ヨハネスブルグ地球環境サミット、2002年10月)より前に京都議定書を批准するというプロセスについて合意した。

  • この合意の目玉は、排出権取引に関するEU指令に関する提案である。同提案は2005年までに全EU諸国が排出権取引システムを実施し、2008年までにはそれに発電、金属、セメント部門を対象とし、2008年には1トンの不遵守あたり100ユーロの罰金(国内で企業が政府に払う罰金)を課するとしている。
2.排出量と割当量の差について  (参照:1998 emissions ・・・)
  • 1998年現在(データの取れる最新年)と京都議定書の割当量を比較すると、欧州連合は7000万トン、日本は5000万トン程度を今後削減しなければならないが、ロシアやウクライナなどは逆に今後大幅に排出量を増やす余地がある。

3.米国の参加について  (参照:The political ・・・)
  • ボン合意が米国抜きで成立したことによって、米国の国内取り組みは加速した。多くの温暖化対策法案が議会に提出されている。共和党を脱退したジェファーズ上院議員は議会環境委員会の議長を努めており、排出権取引制度の導入が必要といっている。
主な質疑 :
Q 米国の参加の見通しについてはどうか?
A  ヨハネスブルグサミットまではその可能性は殆どないが、議定書が発効すれば米国内の意見のバランスも変わってきて、長期的には参加の可能性は十分にある。具体的には三つの形がありうる。

 1) 政権交代にともなうもの。
 2) 議定書関連の再交渉にともなうもの。これには、吸収源で大きな数字を確保するという方法と、ロシアやウクライナからの排出権獲得を条件とする方法がある
 3) 第2約束期間(2009年〜2018年)から参加するとして、その排出枠の交渉に参加するというもの。

Q 米国の参加がないと議定書の意味が無いのではないか?
A 
 1) 米国は代替案を出すといっているがこれまでのところ代替案は出ていないし、各国に数値目標を設定するという京都議定書以外に代替案はないだろう。
 2) 国際競争力の懸念を回避しながら議定書を遵守する方法はいくつかあるはずだ。欧州では排出権を割当てることで国際競争力を維持しつつ温暖化対策を行う道を選びつつある。
 3) 米国に温暖化対策を真剣に取らせるためには、米国以外の国々が議定書を発効させて温暖化対策に真剣であることを見せると同時に、排出権取引や技術開発など産業のメリットになる部分があることをデモンストレーションすることが最も有効だというのが私の議論した米国研究者の見解だ。

Q 欧州と異なり日米は数値目標が厳しく、排出権の売り手はいないし、国際競争力はやはり削がれるのではないか。
A 日本の数値目標が欧州と比較して厳しいということは理解している。ただし、ボン合意で吸収源を1300万トンC獲得したこともあり、この差はいくらか和らいだし、それほど日本の削減コストが劇的に欧州と比べて高いという認識はしていない。
 
Q  排出権割当は平等に割り当てることが難しいのではないか。EU指令ではどうなっているのか。
A 今回のEU指令での案では、各国がそれぞれの国内で割当方法を選択することとなっており、各国に任されている。割当は難しい政策プロセスであることは分かるが、温暖化対策というものはどのようなやり方をしても難しい。その中ではベストな方法を選択したというのが感想だ。
 
Q  欧州、例えばイギリスでも、温暖化対策規制が入るとなると様々な反対があったはずと思うが、どうして国内合意を得るに至ったのか。
A  英国では産業界が数年前には温暖化問題を重視して政府と協力して制度を作るようになった。もしも産業が反対し続けていたら、今日の制度とはだいぶ異なったものになったと思う。別の理由としては、反対を続けると炭素税制度になり、これを回避したという側面もある。また、温暖化対策をすることで、技術開発や効率改善といったプラスの効果があるということも産業界の前向きな態度に 繋がった。
 
Q 排出量割当ては企業単位か?
A  そうだ。排出量のモニタリング(排出量の勘定)は工場の施設ごとに行う。企業はその保有する施設の排出総量に見合うだけの排出権を持っていなければならない。
 
参 考 : マイケル・グラブ:英インペリアル・カレッジ・ロンドン教授。
英国王立国際問題研究所(Chatham House)のRoyal Institute of International Affairs(RIIA)で1993年1月から1998年9月までエネルギーおよび環境プログラム(EEP)のリーダーを務め、気候変動の政治的側面に関する研究でよく知られている。同氏はとくに気候変動の経済的・政治的側面に関する数々の国際機関および研究のアドバイザーを務め、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の数多くの研究で主執筆者を務めている。
最近の主な著書:「The Kyoto Protocol − A Guide and Assessment 」(財団法人 省エネルギーセンター から訳本「京都議定書の評価と意味 − 歴史的国際合意への道」が出版されている。)




本件に対するお問い合わせは、こちら からお願いいたします。