<2.シミュレーション要約>
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(原油価格高騰の日本経済への影響) |
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・標準予測では、通関原油価格は、中東情勢の沈静化に伴い、
今年の秋口以降、緩やかに低下すると見込んでいる。
しかし、中東情勢の一層の深刻化による原油供給の減少を懸念する向きもある。
また、原油輸入が急激に増加している中国経済の過熱が続く可能性もある。
こうした事態が実現した場合、原油価格は標準予測以上に上振れすることになる。
ここでは、2004、2005年度の通関原油価格が標準予測に比べ50%上昇した場合の日本経済への影響を計測した。
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・シミュレーション結果(下表(1))によれば、原油価格の標準予測比50%の上振れは、
日本の輸入価格を約8%押し上げ、企業物価を約0.4%押し上げる。
輸入価格上昇に伴う交易条件の悪化により購買力は低下し、国内需要は減少する。
この結果、名目GDPは標準予測に比べ1年目が約0.9%、2年目が約1.5%減少する。
実質GDPは1年目約0.3%、2年目約0.7%減少する。
なお、消費者物価は国内需要減少の影響を強く受け約0.1%低下する。
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・日本経済の足どりがしっかりとする中で、
原油価格の上昇が短期に収束する場合には国内経済へのマイナスの影響は相対的に小さい。
しかし、価格高騰が長期に続いた場合は、国内民間需要の押し下げ圧力は徐々に強まり、
そのマイナス影響は無視できない。原油価格の動向は、
今後の日本経済を見る上で大きな下方リスクであり、注視する必要がある。
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(中国・米国経済が腰折れした場合の日本経済への影響) |
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・中国経済の過熱抑制、米国経済の上振れ抑制を目的として、
海外の金融政策は引き締め局面に入りつつある。
標準予測ではこうした状況を踏まえ、予測期間の世界貿易数量(世界経済成長)は鈍化すると見込んでいる。
しかし、金融引き締めが行き過ぎた場合など標準ケース以上に世界経済の成長が鈍化する可能性もある。
ここでは、世界貿易数量が標準予測に比べ5%減少した場合(経済成長率が米国についてはマイナス2%ポイント、
中国についてはマイナス1%程度減速する場合に相当)の日本経済へのインパクトを計測した。
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・シミュレーション(下表(2))では、
世界貿易数量5%の縮小は輸出数量を約1.8%押し下げる。
輸出の減少は国内生産(約0.3%減)を押し下げ、
企業の経常利益(約0.7%減)や家計の所得(約0.1%減)を落ち込ませる。
この結果、消費や設備投資など国内需要が減少し、実質GDPは1年目が約0.2%、
2年目が約0.3%標準予測に比べ減少する。
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