電力中央研究所

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知の源流

過酷事故時の原子炉内流動を精緻に可視化「軽水炉模擬燃料冷却限界実験設備」

高レベル放射性廃棄物の地層処分を実現するには、周辺地盤(ニアフィールド)の長期的な力学的挙動を評価、検証しておく必要がある。2009年に電力中央研究所 地球工学研究所に導入された「遠心力載荷岩盤模型実験装置」は、数千年の現象を数ヶ月で再現できる実験装置。地盤の耐震実験にも活用できるため、発電所周辺の地盤を再評価する実験装置としても、安全性の検証に大きく貢献している。

放射性廃棄物の地層処分に向け地盤の長期力学的挙動を評価

 高レベル放射性廃棄物を地中に埋設して処分するには、その周辺地盤(ニアフィールド)の力学的挙動を評価、検証しておく必要がある。この研究に欠かせない実験装置が、今回紹介する「遠心力載荷岩盤模型実験装置」となる。

 縮小模型を使った地盤の評価実験では、相似則を満たすように縮尺率に反比例した重力を与えなければいけない。たとえば、縮小模型を1/30のスケールで作製した場合は、30Gの重 力を与えると、実物と同じ応力状態を再現できるようになる。2009年に電力中央研究所に導入された「遠心力載荷岩盤模型実験装置」は、最大100Gの遠心加速度を実現可能な遠心装置 となる。遠心装置は大手ゼネコンなど国内外の他機関にも設置されているが、長期にわたって連続稼働でき、高温・高圧の状態を負荷できるという点では、他の遠心装置と一線を画す、世界 的にも類を見ない実験装置となる。

 地層処分される高レベル放射性廃棄物はガラス固化され、オーバーパック(金属容器)とベントナイト(粘土)で周囲を保護する構造になっている。このオーバーパックは約100℃まで発熱し、 ベントナイトは水(地下水)を含むと膨らむという特性がある。このため、ニアフィールドの力学的挙動を模擬実験するには、通常の地盤評価とは異なる、特殊な環境を再現しなければならない。

 

 電力中央研究所に導入された遠心装置は、最大20MPaの圧力負荷、最大100℃の負荷温度に対応し、また数十年から数千年という長い期間にわたる地盤の挙動を評価することが可能と なっている。縮小模型を使った実験では、「与えた重力の2乗」に反比例して時間が経過していくが、仮に100Gの重力を与えた場合、1000年の時間経過を観測するのに0.1年(36.5日)の月日 を要する。電力中央研究所の遠心装置は最大6ヶ月まで連続稼働させることが可能であり、数千年という長期にわたって地盤の挙動を再現できるように設計されている。

 この研究に携わる岡田氏は、研究の重要性について次のように語っている。「高レベル放射性廃棄物が埋設される地層は、熱・水・応力などが相互に作用しあう状態が長期にわたって生じる 極めて複雑な環境下にあります。さらに、地震が多い日本の地盤は亀裂が多く、柔らかいという特性があります。つまり、浸水しやすく、移動しやすい地盤であると考えられます。このような環 境下でもオーバーパックの移動や破損が生じないかを十分に検証し、確固たる安全性を確保しなければいけません。そのためには模型実験から得た結果をもとに解析コードを開発し、数値 計算と実験の両面から地盤評価の研究を進めていく必要があります」。

 高レベル放射性廃棄物の処分は、各国が独自に解決しなければならない課題であり、その安全性は最優先されるべき研究テーマとなる。地層処分の実現に向けて、岡田氏らの研究が重要 な役割を果たしていることは想像に難くない。

地盤の耐震性評価にも利用可能な実験装置

 本装置は、土木構造物の耐震実験に利用できることも特徴の一つとなる。2014年には、耐震実験用に1次元方向に加振できる振動台を増設。原子力発電所の基礎岩盤や周辺にある岩盤斜面の耐震性を評価する実験装置としても利用が開始されている。

 もともと原子力発電所は強固な岩盤の上に建設されているが、2011年の東日本大震災以降、基準地震動が大幅に大きくなり、その値以上の地震力が発生した場合にも、設備が耐えられるかを評価することが求められることとなり、その評価に必要となる地盤の破壊箇所や変形量、破壊後の斜面崩落挙動を解析する手法の開発と検証を本装置を用いて進めている。2015年中には振動台を3次元方向に加振できるものを増設し、より確度の高い耐震実験が行える装置に改良する予定だ。こちらも世界的に例のない試みとなる。

社会問題を直視しながら真実を追求できる研究環境

 岡田氏は、大学時代から20年以上にわたって岩石、岩盤の力学研究を続けてきたスペシャリスト。本装置を利用した研究にも、2009年の導入時から携わっている。就職先に電力中央研究所を選んだ理由については、「社会に貢献する総合的な研究に取り組めることが一番の理由です。数値計算と実験の両面から研究を進めることができ、サンプルを使った小規模な研究だけでなく、規模の大きい研究にもチームで挑戦できます。大学の研究室とは全く次元が違います。研究レベルが極めて高いことも、電力中央研究所の魅力の一つです」と語っている。

 また、研究に対する姿勢については、「社会問題に直接携わる研究なので、正直に現象を見つめていきたいと思います。実際に起こるであろう長期的な現象を様々な利害に捉われることなく探求し、学術的な意味で真実を知り、追求していきたいと考えています」と信条を述べている。

 電力中央研究所で進められている研究の中には、国策に深く関わる研究テーマも含まれる。とはいえ、電力中央研究所はあくまで“科学を追求する研究者の集合体”であり、真摯に研究に取り組む姿勢に何ら変わりはない。社会問題を直視しながら、科学の力で新しい未来を創造する研究が今も進められている。

研究員プロフィール

地球工学研究所 地震工学領域 上席研究員
岡田 哲実 おかだ てつじ

最終学歴九州大学大学院 工学研究科 土木工学専攻(修士課程)
(2010年に同大学にて博士(工学)学位取得)
当所入所年月1994年4月
研究専門分野岩盤力学
研究内容原子力発電所の基礎地盤および周辺斜面の耐震安定性評価、ならびに高レベル放射性廃棄物地層処分施設の廃棄体周辺岩盤の長期挙動評価に関する研究に従事。ここ数年間は、原子力発電所の再稼働に係わる岩盤の動的強度および引張強度の評価方法の確立に関する研究に取り組む。

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