地球工学研究所

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研究紹介

使用済核燃料貯蔵・放射性廃棄物処分

使用済燃料の長期貯蔵管理技術の開発

 原子力発電では、原子燃料は製造、発電、再処理、再利用とサイクルの輪を形成しています。 各工程間を結ぶものとして“輸送”があります。原子燃料物質等の放射性物質は、厳重な管理の下、輸送容器に入れられて、安全に輸送されています。 輸送容器は、万が一の事故(落下や火災など)に遭遇しても、内部の放射性物質が漏れないような構造になっています。 また、放射線を遮へいする機能や臨界を防止する機能、さらに、使用済燃料等から出る熱エネルギーを外部に放出する機能(除熱)を持っています。
 我が国では、原子力発電所で使用された燃料は、再処理して、再利用する方針です。 原子力発電所では、原子炉から取り出した使用済燃料の放射線強度が高く、発熱量が大きいため、これらが下がるまで、一旦、燃料プールに保管します。 その後、使用済燃料は再処理工場に輸送しますが、一部の使用済燃料は、再処理するまでの間、密封された容器に入れて“貯蔵(中間貯蔵)”します。 貯蔵期間は、40〜60年間を想定しています。貯蔵容器の中には、ヘリウムガスなどの不活性ガスが充填されているため、燃料プールでの貯蔵(湿式貯蔵)と区別して、乾式貯蔵と呼ばれます。 乾式貯蔵は、除熱を自然対流で行うため、空調装置などの動的機器がなく、電源喪失などによる事故の影響を受けにくい方式です。世界的に見ても、原子力発電を行っている国々では、乾式貯蔵が増えています。 乾式貯蔵には、使われる容器によって、主に二つの方式があります。金属製の容器の場合を金属キャスク貯蔵方式と呼び、コンクリート製の容器の場合をコンクリートキャスク貯蔵方式と呼びます(図1)。 金属キャスクには、貯蔵専用の設計と輸送と貯蔵の両方に使える設計があります。 コンクリートキャスク貯蔵方式では、コンクリート製容器の内部にキャニスタと呼ばれる金属製の円筒密封容器があり、その中に使用済燃料が収納されています。 コンクリートキャスクは貯蔵専用の設計で、輸送はキャニスタを金属キャスクに詰め替えて行います。 我が国では、金属キャスクによる貯蔵が日本原子力発電(株) 東海第二原子力発電所の敷地内で行われています。 また、リサイクル燃料貯蔵(株)が青森県むつ市に、金属キャスクによる貯蔵施設を建設し、貯蔵の準備を行っています。
 当所では、輸送や貯蔵について、安全・安心で経済的な技術の開発研究を行っています。 研究の推進にあたっては、図2に示すように、国内の電気事業はもとより、国外の研究機関とも密接に連携し、ニーズに合ったタイムリーな成果を得て貢献するよう心がけています。
 輸送技術については、国際原子力機関(IAEA)の輸送規則に定められた試験条件に対する評価や試験を行って、輸送の安全性を明らかにしています。 輸送規則では、9mの高さからの落下事故、800℃、30分の火災事故や200m深さへの海没事故などに対する安全評価が求められます。 当所では、実物大の容器を用いた試験や構造・熱・海洋拡散解析による評価で安全性を明らかにしています。
 貯蔵技術については、貯蔵状態での長期健全性(閉じ込め、遮へい、臨界防止、除熱機能)を試験や解析で明らかにしています。 さらに、地震などの自然災害や航空機衝突などの事故に対する評価手法の開発も行っています。

図1

図1 使用済燃料の貯蔵容器

図2

図2 「使用済燃料の輸送・貯蔵」研究の国内外実施体制

低レベル放射性廃棄物処分の長期安全性評価技術の信頼性向上

 原子力発電所の運転時および発電設備解体時に発生する放射性廃棄物は、低レベル放射性廃棄物として陸地に埋設処分することになっています。 当所では、低レベル放射性廃棄物を安全に処分するための技術開発、特に土木工学、地質・地下水学的観点から研究を行っています。 研究の推進に当たっては、国や電気事業等の国内外の機関と密接に連携し、ニーズに合ったタイムリーな成果を得て、貢献するよう心がけています(図1)。 当所では、低レベル放射性廃棄物の処分の合理的な設計・評価および円滑な運用を支援するために、人工バリアの長期耐久性評価手法、天然バリアの調査技術の開発に取り組んでおり、特に人工バリア材料(セメント、ベントナイト)の変質メカニズムの解明、ならびに変質に伴う物性変化を評価する手法の開発を進めています。 そして、地層処分研究として開発した技術を含む、当所保有の地質・地下水・微生物調査技術、コンクリートが接触する岩盤のアルカリ影響評価技術を用いて、処分空洞周辺の環境条件評価方法の提案を行うために以下のような研究を実施しています(図2)。

図1

図1 「低レベル放射性廃棄物処分」研究の国内外実施体制

図2

図2 低レベル放射性廃棄物処分のうちL1における天然バリアの役割と研究課題

高レベル放射性廃棄物処分の長期安全性評価技術の信頼性向上

 日本では、原子力発電の原子燃料の有効利用を目的として、使用済燃料から再び利用可能な燃料を取り出すために、再処理しています。この際、高レベル放射性廃棄物と呼ばれる放射能レベルの高い廃棄物が発生します。 高レベル放射性廃棄物は、長期間その影響が地表に出てこないように地下に閉じ込める方法が、現状の科学技術では最善だと考えられています。これは地層処分と呼ばれ、我が国も採用する方針です。この方針のもとに、当所は地層処分技術の開発研究を行っています。 現在、図1に示すように、国や地層処分の実施主体である原子力発電環境整備機構、関係する研究機関と密接に連携し、日本全体で地層処分のために必要な研究を分担して行っています。

図1

図1 「高レベル放射性廃棄物処分」研究の研究体制

 地層処分の研究は、地層自体の閉じ込める機能を利用する天然バリアと、人工容器で密閉する人工バリアの研究に大別され、当所はその両方に取り組んでいます。
 地層処分では、高レベル放射性廃棄物をその影響がなくなるまでの長期間にわたり、地下深くに閉じ込めておくことが可能な場所を選ぶことが必要です。 このため、天然バリアの研究として、過去の地層の隆起・侵食を明らかにし、必要な期間の閉じ込めが可能かどうか予測する方法を研究しています。 また、長期間閉じ込めることが可能な地層を選ぶために、地下の地質・地下水や化学的な環境を明らかにするための研究を行っています。 高レベル放射性廃棄物を地下深くに閉じ込めても、速い地下水の流れによって短い時間で地表に運ばれてくることがないように、地下水の流れの速さなどを調べることが重要です。 このため、その流れの速さの目安として、雨が地下水となってからどのくらい長い間地層に閉じ込められていたかを明らかにする、地下水年代測定と呼ばれる技術の開発を進めています。 さらに、高レベル放射性廃棄物が万一漏えいした場合にも、地表には到達しないことを確かめるため移動速度や移動経路を解析する技術の研究にも取り組んでいます。
 高レベル放射性廃棄物は、ガラスとともに溶かして金属の容器に密閉し、さらには周りを粘土材料で囲んで地下水の流れを遅くして、地下深部に閉じ込めます。 そして、閉じ込めている間に金属容器の重さで粘土材料と容器の間に隙間が空いたり、下に沈んだりして閉じ込める機能を失わないようにする必要があります。 このため、人工バリアの研究として、金属の容器と粘土材料と岩盤の模型を高速回転することで大きな重力をつくり、 1000年程度時間がかかる現象を半年程度で再現して、長い時間にわたって粘土材料と金属容器が安定であることを確認する研究を行っています。

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