石炭をクリーンに利用する−石炭ガス化複合発電技術−

 石炭は、他の化石燃料に比べて、埋蔵量が豊富で地域的偏在性が低いという特徴を持つことから、重要なエネルギー源と位置付けられています。しかし、石炭は石油や天然ガスに比べて、発熱量当たりの二酸化炭素発生量が多いことなどから、地球環境問題への対応が求められています。このため、石炭をクリーンに利用する発電技術として、高効率で環境性に優れた石炭ガス化複合発電(IGCC)の開発が国内外で行われています。当研究所では、IGCCの実用化を目指し、その中核となる石炭ガス化技術の開発を進めています。

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‹ IGCCのシステム構成 ›

 IGCCは、固体燃料である石炭を可燃性の石炭ガスに転換する石炭ガス化設備、石炭ガス中に含まれる不純物を除去するガス精製設備、精製後の石炭ガスをガスタービン燃料として発電を行う複合発電設備から構成されます。

 我が国では、電力会社が一丸となって、他に例の無い空気吹き二段噴流床石炭ガス化技術を用いた高効率なIGCCの開発を進めています。1986年度から開始された、石炭処理量200トン/日規模のパイロットプラントプロジェクトを経て、250MW級のIGCC実証プラントプロジェクトを推進しました。この実証プラントプロジェクトは、電力共同出資により設立された(株)クリーンコールパワー研究所が実施主体となって進められ、福島県いわき市の常磐共同火力(株)勿来発電所構内で、2007年度から2012年度まで実証試験運転を行ないました。現在、常磐共同火力(株)により商用運転されています。

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‹ 空気吹き二段噴流床石炭ガス化炉の原理 ›

 石炭はコンバスタ部とリダクタ部に、ガス化剤となる空気はコンバスタ部だけに投入されます。コンバスタ部は高温となり、石炭中の灰分は溶けて流れ落ちます。コンバスタからの高温のガスとリダクタ部に投入された石炭が反応し、効率よく石炭をガスに転換します。

 当研究所は、三菱重工業(株)と共同で、実証プラントガス化炉の原型炉である、2トン/日石炭ガス化実験装置(2トン/日炉)を設置し、空気吹き石炭ガス化技術のプロセス開発を行い、200トン/日パイロットプラントガス化炉の設計や運転を支援してきました。さらに、パイロットプラントプロジェクト終了後は、石炭ガス化技術実用化の鍵となる、運転信頼性の確保、高効率運転の達成、コスト低減のため、実験技術と数値解析技術を融合した「石炭ガス化炉設計・運転最適化支援ツール」の開発を進めるとともに、実証プラントプロジェクトの設計や運転の支援を行ってきました。


 ガス化炉の合理的設計や高効率で安定した運転を行うためには、炉内で起こる様々な現象を詳細に把握することが重要です。数値解析による現象予測技術は、実験と比較してよりフレキシブルな条件設定が可能で低コストな検討手法として活用できます。


 当研究所の石炭ガス化炉数値解析技術では、ガス流動、粒子輸送、伝熱、化学反応等の様々な炉内現象を考慮するため、多くの解析モデルが導入されています。2トン/日炉の知見や各種基礎実験に基づく解析モデルを導入することにより、非常に精度の高い数値解析技術として確立し、実証プラントプロジェクトの支援にも活用しています。

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< 石炭ガス化炉設計・運転最適化支援ツール >



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< 石炭ガス化炉数値解析技術の概要 >

 ガス化炉内の重要な現象を考慮した三次元数値解析であり、炉内のガス流れや粒子挙動、温度、ガス組成、ガス化炉底部のスラグ挙動などを予測・評価することが出来ます。

 石炭ガス化炉の最適設計や性能予測、使用する炭種の評価のためには、ガス化反応特性を知ることが非常に重要です。しかし、IGCCでは、石炭ガス化炉は2.5〜3MPa程度の加圧下で運転され、炉内温度はおよそ1800℃の高温になります。そこで、当研究所では1800℃、2.5MPaまでの実験が可能な世界的にもトップクラスの仕様をもつ超高温・加圧型燃料反応実験設備(PDTF)を開発し、高温高圧下での石炭熱分解過程やチャーガス化反応の実験とモデリングを行っています。


 このPDTFと加圧型熱天秤(PTG)により、低温から高温までのガス化反応速度を求め、反応温度や炭種によるガス化反応速度の相違を明らかにすることが可能であり、ガス化反応面からの炭種評価に活用するとともに、これらの結果を数値解析技術に反映しています。

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< 超高温・加圧型燃料反応実験設備(PDTF) >

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< 加圧型熱天秤(PTG) >

 ガス化炉内で起きる重要なガス化反応には、2種類あります。

  C+CO2→2CO、C+H2O→CO+H2

 PDTFやPTGは、これらの反応速度を測定するための装置であり、反応条件に応じて二つの装置を使い分け、効率的に実験を行っています。実機ガス化炉内の条件を模擬した詳細な実験結果から、反応モデルを構築し、数値解析に反映しています。

 現在、当研究所は、2トン/日炉に替わる小型ガス化炉として、「3トン/日石炭ガス化研究炉(3トン/日研究炉)」を用いた研究を実施しています。3トン/日研究炉は、数多くの機能・特殊計測機器を備えた、世界にも例のない研究用ガス化炉であり、従来の2トン/日炉では実現不可能であった幅広いガス化条件の達成と炉内現象の定量的評価を可能とするものです。


 3トン/日研究炉を用いて、ガス化炉運転条件の影響評価、様々な性状の石炭のガス化特性評価などに加えて、新しい監視計測技術の開発やガス化炉から排出されるスラグの有効利用技術の開発も行っています。

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< 石炭ガス化研究炉の概要 >

 石炭処理量3トン/日規模、運転圧力2MPaの加圧型ガス化炉です。ガス化剤として、空気だけではなく酸素も利用可能であり、幅広いガス化条件で試験を行うことが出来ます。

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< 溶融スラグ流監視技術 >

 ガス化炉底部から流れ落ちる溶融スラグの画像をオンラインで解析し、流下状況を判断する新しい監視システムの開発を行っています。

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< スラグ有効利用技術 >

 ガス化炉底部から流れ落ちた溶融スラグは、水で急冷され、ガラス状となり排出されます。このスラグを発泡させ、軽量骨材や緑化資材などに利用するための研究を行っています。

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