学会活動

学会活動

EGU 2018に参加して

水域環境領域 特別嘱託
立田 穣

1.会議の概要

 2018年4月9日から4月13日にかけて開催された地球惑星科学研究に関する欧州連合国際会議EGU(European Geoscience Union)2018に参加し、当所の研究成果を発表した。同国際会議は、惑星地球科学分野における研究の進捗に関する国際的情報交換のために、毎年ウイーン国際会議場で開催されている(図1)。主催者によれば、会議には105ヶ国から15,075名の参加があり、4,776件の口頭発表と11,128件のポスター発表、および1,419件のPICO発表(Presentation Interactive Content、口頭・ポスターの混合型の発表形式、図2)があった。500名以上の参加国は米・中・英国・仏・伊・独の6ヶ国であり、日本からはおよそ200名が参加した。研究発表分野は、惑星宇宙・地球・大気・地質・陸圏・水圏・海洋に関する科学・地球科学と広い分野にまたがっている。

図1 EGU 2018ウイーン国際会議場 図2 PICO発表用の専用会場(6ヵ所)

2.研究発表と所感

 報告者らは、福島・チェルノブイリに関する人工放射性核種に関するセッションにおいて、北太平洋、福島沿岸の海洋・海産生物における環境放射能の浄化過程について、科学研究補助金で実施した研究成果を発表した。本セッションでは、森林・土壌・動植物・陸水・海洋・海産生物に関して、大気圏内核実験・チェルノブイリ・福島事故に由来する放射性セシウム・ストロンチウムの挙動・分布の最新の成果について、日本、フランス、中国、韓国、ウクライナなどの研究者と、チェルノブイリ事故由来の放射性核種の挙動との類似や相違について発表と議論を行った。参加者による発表では、陸域では福島とチェルノブイリとの地質や粘土鉱物の違いのため、必ずしも類似的な様相を示していないが、海洋拡散の違いについては、一義的には、バルト海・黒海と北太平洋の海域の交換率で解釈できると報告されていた。本セッションは、福島事故直後の2012年からEGUで設けられたが、海産生物関連についての報告は、今回のコンビーナーに提起されて参加した報告者による発表が初めてであり、当所の海洋拡散モデルと結びついた生物移行モデルの研究成果が認められたものと考える。このように当所の計算科学研究成果が、福島関連の海洋環境放射能動態解明に貴重な貢献をしていることをあらためて実感した。一方、本セッションでは、福島事故直後は発表数が急増したものの、最近では発表数は低減しつつあり、長年研究に携わってきた放射能生態学研究者による腰を落ち着けた科学的検証の段階に入りつつある印象を受けた。

3.その他

 近年、学会の会議運営の効率化のために、様々な学会の集合体による連合集会の開催が多くなってきている。1万人規模の本研究集会の場合は、割り当て可能な口頭発表、ポスター発表も飽和しつつあり、PICO発表枠の拡大や、夜間枠の増設で対応する方向にある。専門分野を同じくする研究者の研究情報の交換が主であった従来の学会の形式に比較して、大規模集会では関連する他分野の研究・技術の進展状況を垣間見る機会が増えるという利点がある。半面、発表分野が多岐にわたり情報収集すべき発表が必ずしも終日あるわけではないこともあり、時間を持て余す場合も少なくない。欧州での学会発表では、時差ボケで真夜中に目覚めることもあり、早めにその日の業務が完了した後には、人的ネットワークの充実のために、会議事務局主催の見学ツアーに参加するのも不可能ではない。一方で、時差ボケは昼間の判断力を低下させる場合もあり、欧州では比較的治安のよいウイーンでも、安全への留意を怠らないようにした。報告者は、過去に国際集会で配布された会議用バックを背にしていたところ、かみそりで底部に穴をあけるスリにあった程度であるが、時差ボケによる注意力低下は避けがたい。

 ウイーンはオペラ座やウイーンフィルの本拠地であるため、海外出張時のリスク管理は必要とはいえ、会議終了後にこれらに赴くのは、会議期間中の息抜きとして選択肢に入る。ただし、次年度からEGUでは夜間発表枠の増設が計画されており、参加予定者のうちクラシック音楽が好きな人の余暇活動に影響しそうである。

 なお、会議場は、IAEAその他の国際機関が集中するウイーン国際センター(Vienna International Center、VIC、図3)内に位置する。このVICは、市の中心部から地下鉄で20分ほどでアクセス可能であるが、市の中心部はホテル宿泊費が高いため、国際会議や国際機関の会合参加者は、市中心部とVICの間にある価格もアクセスも手頃なホテルを利用することが多い。今回、発表者が選んだ宿泊先はこのようなところにあったため、ホテルのロビーで偶然旧知の国際機関職員と再会し、近況他の情報交換を行う機会を得た。

図3 ウイーン国際センター

©2018 電力中央研究所

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