学会活動

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AGU fall meeting 2018に参加して

水域環境領域 主任研究員
吉井 匠

 2018年12月10〜14日にアメリカ ワシントンDCで開催されたアメリカ地球物理学連合(American Geophysical Union、AGU)の秋季大会に参加してきました(図1)。アメリカ地球物理学連合は地球物理学の分野における世界最大規模の学会です。名前からするとアメリカ国内の学会のように思われるかもしれませんが、会員の約4割はアメリカ国外の居住者であり、国際的な学会になっています。その年次学会である本大会では、世界101カ国から28,500人以上の参加者があり、8,000件の口頭発表、17,000件のポスター発表がなされました。当学会では、気象学・海洋学、固体地球物理学、水文学、宇宙科学など、幅広い専門分野を扱っています。今回の大会でもアメリカ航空宇宙局(NASA)が太陽探査に関する研究発表を行い、話題となっていました(『NASAの太陽探査機、太陽に最接近し、コロナから伸びた長い流線をとらえる』 、Newsweek、2018年12月18日版)。

図1 会場となったthe Walter E. Washington Convention Center

 報告者は自然災害分野において、津波堆積物関係の研究を発表するとともに、最新の研究動向の把握を行いました。津波被害の低減は世界中の国々が抱える課題であり、2011年の東日本大震災以降は特に大きく注目されています。津波の研究といっても内容は多岐にわたり、例えば津波の発生メカニズム(地殻変動、気象擾乱、火山活動、地すべり)の解明や、早期検知システムの構築、津波に関する啓蒙活動などがあり、関連する専門分野も相当幅広くなります。本大会では、津波に係わる様々な研究が津波の学際的研究というひとつのセッションで発表されるため、多方面の研究分野の専門家が一堂に会して議論することができます(図2)。
 津波堆積物研究は、地層の情報から過去に発生した津波に関する情報を取得し、将来起きうる津波の予測精度を向上させることが研究の目的になります。今回、報告者は3.11地震津波により東日本沿岸域で形成された津波堆積物の調査結果と、大型実験水路を用いて人工的に作成した津波堆積物に関する研究結果を発表しました(図3)。前者では地層中から津波の痕跡を検出する方法の精度向上を、後者では検出された津波の痕跡から津波の規模を推定する方法の確立を目指しています。今回の発表について聴講者からは、原子力発電所の安全性確立のためには高波浪堆積物(台風などで形成される地層)と津波堆積物を区別する必要があり、その点からも当所の研究成果は非常に重要である、などの評価を頂きました。また、オーストラリアのサーフィン用設備を当研究に活用できるのではないか、という国際色豊かな学会ならではの意見も頂くことができました。

図2 口頭発表会場の様子

図3 報告者が発表を行ったポスターセッションの様子

 さて、AGU fall meetingは例年サンフランシスコで開催されているのですが、会議場の改修の関係から昨年度はニューオリンズで、今年度はワシントンDCでの開催でした。相当数の参加者を受け入れる大規模会議場を確保する必要があるため大都市中心部での開催となり、今回はホワイトハウスやスミソニアン博物館から徒歩5分程度のthe Walter E. Washington Convention Centerが会場でした。ホテルから会場に向かう際にホワイトハウスの裏側を歩いていたところ、警察が突然周辺道路を全て閉鎖し、歩行者は横断歩道すら渡らせてもらえない状態になりました。しばらく待たされていると、警察車両に先導された黒塗りの車が10台程勢いよく走り去り、ほどなくして道路閉鎖は解除されました(図4)。トランプ大統領が乗車していたのかまでは分かりませんが、テレビドラマで見るような光景が見られたことで、ワシントンDCに来たことを強く実感しました。また、お昼休みにスミソニアン博物館を駆け足で見学した際には、見事な展示物から科学技術の歴史や発展を感じる一方、現在学会で発表されている最先端の研究が数十年後には同様に展示されていることを想像し、科学の長大な歴史の中に極めて微力ながらも関与できていること、そのような仕事を担当させていただいていることに誇りを感じました(図5)。
 なお、当学会の日本版ともいえる、日本地球惑星科学連合の年次大会が毎年5月に千葉県の幕張メッセにて開催されています。こちらも8,000人程度の参加者がある大規模な大会であり、参加有料にはなりますが、一般の方も参加可能です。自然科学に興味を持たれた方は参加してみてはいかがでしょうか。

図4 ホワイトハウス裏側で道路封鎖する警官と護衛される車両

図5 1970年代に使用された火星探査機

©2019 電力中央研究所

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