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第18回 
再生可能エネルギー発電と気象予測(1) 自然変動電源大量導入下の電力需給運用と気象予測の役割

大気・海洋環境領域
上席研究員
野原 大輔

2018年8月24日

 太陽光発電や風力発電は、天候の変化によってその出力量が変化する、自然変動電源と呼ばれています。2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度が開始されたことにより、それらの電源の導入量が急増しています。全国の電力系統に接続された太陽光発電や風力発電は、2017年9月末の時点でそれぞれ約4100万kW、約320万kWとなっています。これらを合計した発電容量は、全国の電力需要の約40 %に相当します。 また、系統接続が認定されたものの未だ稼働していない設備容量を加えると、太陽光発電が約7100万kW、風力発電が約690万kWであり、今後数年で現状の2倍程度の自然変動電源が導入されると見込まれています。 これらの電源は、気象条件や土地価格などに起因して地域的な偏りが見られます。図1に、都道府県別の太陽光発電と風力発電の導入量を示します。 太陽光発電の立地は、年平均日照時間の長さや設置する土地が安価であるなどの要因に影響され、太平洋側の農村部に多く分布します(茨城県、愛知県、千葉県、兵庫県、福岡県など)。一方、風力発電の立地は、継続的に強風が吹くことに加え、風車の回転による騒音問題を避けるために住宅密集地から離れ、まとまった土地を確保しやすい日本海側の海岸線や山岳部に偏る傾向があります(青森県、北海道、秋田県、鹿児島県、三重県など)。

図1 都道府県別の太陽光発電(左)と風力発電(右)の導入量
(経産省資源エネルギー庁固定価格買取制度HPより著者作図)

  電力系統を安定に運用するためには、需要と供給を常にバランスさせておく必要があります。自然変動電源の影響が小さい状況では、電力会社は、翌日の需要を予測して事前に発電機群を準備し(電力需給運用計画)、当日に生じる予測との誤差を解消するために、火力発電等の出力を調整して、需要と供給のバランスを保ってきました。近年、自然変動電源が大量に導入されてからは、需要の予測に加えて、気象条件に伴う供給量の予測も考慮した電力需給バランスが必要になってきました。
 例えば九州電力では、2018年6月末時点で接続されている太陽光発電の容量は約800万kW(九州電力HP)と推定されており、これは春秋の軽負荷期の電力需要とほぼ同量です。図2に、2018年春季における九州電力の電力需給実績を示します。
 4月29日はゴールデンウィーク期間中のため電力需要が低調で、日中の需要は約800万kWでした。この日は九州全域で晴天となり、太陽光発電量は正午ごろ650万kWに達しました。ベーズロード電源や火力発電を合わせると、供給量が需要を上回る状況となりました。このため、揚水発電所ではダムに水を汲み上げる揚水動力運転を行い、さらに火力発電所の出力を低下させるなどして、電力需給をバランスさせる対応を行いました。一方、夕方から夜にかけて需要の増加や太陽光発電出力の急激な低下のため、揚水発電の稼働や火力発電所の起動・出力増などの対応によって、需給バランスを保ちました。このように、従来の揚水発電の運用では、原子力や火力が夜間に発電した電力で揚水動力運転を行い、需要が増える昼間に発電しましたが、今では運用は全く異なっています。
 一方、5月2日の事例では、曇天だったため太陽光発電の出力が小さく、日中の需要増加には揚水発電や火力発電により対応しました。このように、天候の状況により、日々の電力需給の運用法が変わります。火力発電の起動には、起動が早いガスタービンでも数時間は必要とするため、電力需給運用には気象予測に基づく精度の高い需要予測に加えて、自然変動電源の出力予測が重要になります。

図2 九州電力における2018年春季の電力需給実績の例
(九州電力エリア需給実績データより著者作図)

  前述した通り、今後、自然変動電源の導入が更に進むと予想されています。 これまでは需給バランスの調整は主に火力の出力抑制と揚水動力により行われてきましたが、今後は電力供給が需要を上回る場合に実施する様々な対策として、電力広域的運営推進機関の「優先給電ルール」に則った、以下に示す順序での対応がなされる予定です。

1)火力電源等の出力抑制、揚水運転による余剰電力の吸収
2)連系線を活用した広域系統運用
3)バイオマス電源の抑制
4)自然変動電源(太陽光発電、風力発電)の出力抑制
5)ベースロード電源(原子力、水力、地熱など)の出力抑制

この中で、4)を実施する場合は、実施日の前日に、翌日の気象予測情報を元に策定した翌日電力需給運用計画に基づき、夕方に発電事業者へ出力制御の指示を出し、実施日の当日の気象予測情報を元に見直した需給運用計画を踏まえて出力制御操作を行うことになります。この出力抑制は、離島では既に実施されていますが、本土を対象とした出力制御は現在(2018年7月時点)のところ実施されていません。出力抑制の実施によって、発電事業者にとっては本来得られるはずの収入を得ることができなくなるため、出力制御の指示には説明責任が伴います。気象予測情報は出力制御の理由の一つとして用いられることから、気象予測の役割は重要になります。
 当所では、安定的な電力系統運用に資することを目的に、自然変動電源の出力予測手法を開発しています。この手法のベースには、数値気象モデルを用いた気象予測が使われています。数値気象モデルとは、地表から上空数十kmまでの大気を3次元の格子網で覆い、全ての格子点上での風速・気温・湿度・気圧・雲などの時間変化を、物理法則に基づいて計算機で模擬したものです。気象予測は、この数値気象モデルに初期値を与え、数日先までの気象の時間変化を数値的に解くことで得られます。図3に当所で実施している気象予測(日射量)の例を示します。予測は図2で示した4月29日と5月2日の12時を対象とし、前々日の夕方に発表した予測結果です。4月29日は、移動性高気圧が日本を覆い、1000 W/m2を超える日射量が予測されました。一方、5月2日は、低気圧の接近により九州全域は厚い雲に覆われ、100 W/m2前後の日射量が予測されました。図2の電力需給実績で確認できる太陽光発電量の傾向は、一日半前には十分に予測出来ていることがわかります。

図3 当所で実施している日射量予測の例
4月29日12時(左)および5月2日12時(右)を対象に前々日の夕方に発表した予測結果

 気象予測は電力の需給運用に重要な働きを担いますが、予測が外れることもしばしばあります。このような予測の外れには、数値気象モデルの不完全性、気象力学に内在するカオス性など、様々な要因があります。しかしながら、外れる要因によっては、その外れの程度を事前に予測することも可能です。次回はこの「予測の外れの予測」について紹介したいと思います。

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