内容概要 | 航空界の航空法調査研究会では,IRS“安全報告制度”のもと,人的要因INCIDENTの事例の収集とその内容分析を行うに当たって,人間の過誤の態様(9つに分類)と情報処理行動と背後要因の関係データを,数量化理論という多変量解析法を用いて問題点を定量的に把握することにより,改善策の検討を容易にする研究を行っている。本稿では,IRSの研究の妥当性を立証するため,当エチレン装置で発生した,ヒューマンファクタに起因した事例をもとに,検討することにした。IRSの人的INCIDENT分析手法の汎用性に関しては,次に示すように,3つの肯定的側面と1つの否定的側面がある。1)主要因が拾いやすい。情報処理行動と人間の過誤の様態のマトリックスで状態を見ることができるためである,2)人間の過誤の態様と背景要因との関係が定量的客観的に分析できる,3)数量化理論による分析は,相関関係の有無の程度が定量的で客観的に考察しやすい,4)人間の過誤の様態の8つのカテゴリーの中で,あてはまりの悪いものがある。なお,ヒヤリ・ハット発掘活用運動下で「4M方式による流れ図手法」とIRSの人的INCIDENT分析手法を併用することは,「ヒューマンファクタに起因する事故防止」のシステム安全技法としての有効な分析手法であると言える。
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