内容概要 | 網膜のうち解像度の高い部分で見ることを中心視というが,中心視している部分だけが見えているわけではなく,中心視の周り,即ち周辺視野のうち,認知に寄与する部分を有効視野といい,これは,中心視するのと同時に認識できる範囲であり,注視点の周りでも比較的明確に意識される範囲である。有効視野は注視個所の周りに存在,あるいは出現したものにいかに速く気付きうるか,見落とさないですむかということに深く関係する。被験者にアイマーク・レコーダーをつけてもらい,様々な道路を実際に運転してもらい,こうした運転中の眼球運動を調べると共に,フロントガラスの内側に15個の小さな豆球をつけておき,これを飛び出してきた歩行者などに見立て,そのうちの1つが点灯しときに「ハイ」と言わせるようにして,有効視野の広さと検出反応時間の2つを検討した。検出反応時間は場面が混雑するにつれて長くなり,有効視野は場面が混雑するにつれて狭くなる。また,有効視野の広さは,走行場面の複雑さによっても決まり,走行速度そのものとは直接に関係しない。混雑度が増すと,各注視点で深く見ようとし,そうすると,各瞬間の有効視野が狭くなる。これは注意の深さと広さの相反関係を表しており,人間の注意の働き方の1つの法則である。
|