内容概要 | ヒヤリハットとは現場作業者から「ひやりとした,はっとした」など,いわゆるニアミス,ニアアクシデント事例を収集する活動である。しかし,導入・普及の一時期を過ぎて,いろいろな問題点が浮かび上がってきた。一つは情報収集の手法上の問題である。例えば,簡単に記入できる報告用紙を作れば作業者の手間は減り報告の数は増えるが,具体的な対策のための詳しい情報は得られない。ヒヤリハットの特徴は作業者自身が自ら経験した事例を報告するところにあるため,作業者が自覚できる動作的な事例(滑った・ころんだ)ばかりが集まりやすい。ヒヤリハット活動の実施にあたっては,まず事例を収集する側の目的意識をはっきりさせることが必要である。例えば,作業の中で注意すべきポイントを具体的に洗い出し,現場教育用の事例集やマニュアルに反映させることは重要な目的となりうる。目的が明確であれば,報告者へのフィードバックもしやすい。また活動の活性化のためには,報告者の匿名性についても一層配慮する必要がある。ヒヤリハットは報告を作業者個人の自主性に任せる活動であるため,各人に自覚されない,気づかれない危険は報告されない。また,人によって危険に対する感じ方も違う。報告の質をそろえるためには,例えば報告書のフォーマットを工夫することも一案である。
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