内容概要 | 指差呼称のエラー防止効果を客観的に検証する試みとしては、旧国鉄の鉄道労働科学研究所で行われ、1965年に発表された清宮栄一氏の実験だけである。本稿では、この清宮実験を追試するとともに、別のタイプのエラーとして、運転士が駅長や車掌の間違った出発合図につりこまれるエラーに関する指差呼称の効果も調べられている。清宮実験を追試し、選択反応課題における指差呼称のエラー防止効果を再検証する実験では、「呼称のみ」、「指差呼称」、「指差・呼称なし」、「指差のみ」の条件の違いによる誤反応数の差は全体として統計的に有意であること、個別の条件間比較では「指差のみ」と「指差呼称」の2条件が「指差・呼称なし」条件に比べて有意にエラーが少ないことが分った。指差呼称をする条件としない条件で「つりこまれエラー」の発生率を比較する実験では、指差呼称をする条件では1人もエラーをおかさなかったのに対し、指差も呼称もしない条件では101回目の試行で12人中5人がエラーをおかした。実験の観察から、指差呼称がエラーを予防した最大の要因は、刺激の知覚と反応の間に別の動作とそれに伴うタイムラグが挿入されたことによる焦燥反応や習慣的動作の抑制であると思われる。したがって、今回の実験結果を別のタイプの作業にただちに一般化することは危険である。
|