内容概要 | 化学プロセスでの運転や保守管理において誤った行動、または誤った指示や行うべき行動の未実施が事故を引き起こした事例について検討されている。不確定要素の高い化学反応を伴う産業では、危険要素としてのヒューマンファクターが十分に認識されているとは言い難いが、実際の化学災害ではヒューマンエラーが何らかの形で混触、または化学品の局在化や温度の上昇を招くことにより反応が暴走した例が少なくない。ヒューマンエラーに起因する反応暴走(何らかの原因で化学物質を含む系の熱的制御が不能となった状態)事例では、試料を過剰に供給してしまったり、誤って弁を開けたり、撹拌を停止させるなどの一見些細な事象が甚大な被害を生じさせている。日本の化学産業は重化学工業型から少量多品種生産型への移行が進み、多目的反応槽が増加しているが、これらの反応槽では前バッチ残さや錆などが付着しやすく、洗浄不足、反応残液の抜き忘れなどが事故につながる。また、経験のみに頼り、きちんとした熱的評価を省略して、大きな事故を引き起こす例も少なくない。化学安全においてはヒューマンエラーが軽視されがちであるが、自動化と高度な反応の開発が進む化学分野では、ヒューマンファクターの解析がさらに重要となる。
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