内容概要 | 本研究の目的は、ベム性役割調査目録(BSRI)の尺度の妥当性を吟味し、性役割観の世代間比較を行い、新たな性役割観を検討することである。1974年にBemがBSRIを作成した頃と比較すると、社会情勢、時代的背景、文化的背景など多くの変化が生じているので、質問項目内容、尺度構成などについて再検討することには非常に意味があると考えられる。BSRIから30項目を選定し、児童群・成人群の計385名に質問紙調査を行った。因子分析の結果、BSRIを用いる場合、男性性については項目をそのまま用いることが可能であるが、女性性、中性性は項目の追加修正が必要であると思われる。世代間比較では、各尺度の平均の差の検定で有意な差がみられたものすべてにおいて、子ども世代より親世代の方が平均が高かった。その理由として、子ども世代では男女についての概念が未分化であること、現代の親の子育て観が反映されていることが考えられる。また、新たな性役割観として、自己や他者をとらえるうえで、男女という既成の概念は必ずしも有効ではないことがわかった。したがって、今後の性の区別について、男性・中間性・女性という考え方を提案したいと考えている。
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