内容概要 | 航空事故を実験的に発生させることはできないので、一件一件の事例は、事故防止を考える上で極めて有効な情報を提供してくれることになる。事例は一つとして決して同じではないが、事例を通して人間行動の共通項が浮かびあがり、行動のルールが明らかになることがある。これが人間行動研究の特色であり、意義であると考えられる。輸送機関の中で、航空機の事故発生率は極めて低い。全世界の事業用定期航空路の事故率は100万回出発当たり1~2件であり、ここ20年以上、事故率は横這い状態が続いているが、航空機の交通量増加を考えると、事故率の横這い状態は発生件数の増大を意味している。事故原因をみると、他の産業界と同様に人間にかかわるエラーが最も高くなっており、ヒューマンエラーを防止できれば、事故を減らすことに繋がるという安全の図式ができあがっている。ヒューマンエラーを減らすこと、あるいはエラーを発生させないシステムを整備することがヒューマンファクターの主要な課題といえる。本稿では、1977年のテネリフェ空港で発生したKLM機とパンナム機との衝突事故および2001年に発生した日航機同士のニヤミス事故を例に、パイロットと航空交通管制官とのコミュニケーションに関わるエラーと事故時の人間の行動について考察している。
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