| 内容概要 | 鉄道ではこれまで、確立された事故分析手法があまり用いられてこなかった。本研究は、特にヒューマンファクタが関与して発生した事故の原因分析に関して、鉄道現場のように事故分析の専門家でないものが簡便かつ正確に行うための手法を考案すること、および考案した手法の有効性を検証することを目的として実施された。分析手法としては、事故分析を(1)あるべき事象の流れからの逸脱事象解明、(2)逸脱事象の発生原因の追究、(3)顕在化した原因群の整理の3段階に分け、各段階に(1)時系列対照分析手法、(2)ヒューマンファクタガイドを用いたなぜなぜ分析手法、(3)原因の多視点整理手法を適用している。検証結果から、この手法による分析は、なぜなぜ分析手法を単独に用いるよりも事故に関する理解を促進することが示された。また、各項目の回答数の増加は、分析結果を前にした際の事故や対策についての議論の活性化を促進するものとも考えられる。さらに、本調査は系統の区別なく、たとえば施設現場の事故分析結果についても施設以外の全現場長を対象に実施されたので、本結果は、的確な分析が系統を越えた事故の理解を促進し、これにより系統を越えた事故データの水平展開を可能にすることを示唆している。
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