背景
原子力発電所における運転・保守作業時のヒューマンエラーのゼロ化を図るためには、エラーの未然防止と再発防止の両面より捉える必要がある。とりわけ、原子力発電所のおかれている状況を鑑みると、事前に可能な限りエラー発生の有無とその程度を予測し、好ましい未然防止対策を講じるなど、労働安全衛生の基本理念である「安全で、安心できる職場の実現」が不可欠である。
目的
電力共通研究の一環として、内外に先駆けて、運転・保守現場に存在するエラー誘発要因としてのPSFs ※1の存在とその程度から、どのような種類のエラーが発生し、結果として、トラブルに繋がる可能性があるか、などを「エラーシナリオ」に沿って、論理的、かつ体系的に予測し、必要な情報をタイムリーに提供できる予測システムを開発し、電力各社の運転・保守現場への展開を図る。
主な成果
本システムは、電力各社によって多少の相違があるものの、運転・保守関連の管理・監督者が、概ね、次に示すような場面で活用できる特徴や性能を持っている。
①運転・保守作業の事前診断(エラーは起こるか?)と未然防止対策を講じる場合
②運転・保守作業に係わる危険予知訓練やツールボックス・ミーティング等を行う場合
③教育・訓練センター等における安全教育等を行う場合
④改良工事の効果にかかわる事前・事後評価を行う場合
⑤過去のエラートラブル事例の再評価(やむを得なかったのか?)等を行う場合
今後の展開
本課題は、平成8年度をもって実用システムの開発研究を終了した。現在、原子力発電所および火力発電所の運転・保守作業を始めとして、一般産業(化学産業、製造産業、ガス製造産業など)におけるエラーの未然防止活動に運用されている。
※1 PSFsとは、Performance Shaping Factorsの略語であり、「行動形成要因」または「エラー誘発要因」と呼称されている。このPSFsが職場(作業)に多数存在すると、人間であれば、誰でも、その影響を受けることにより、エラー行為等を起こす割合が高まる、というものである。
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