電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

N06026

タイトル(和文)

固有振動数の温度応力依存性を利用した鉄筋コンクリート構造の早期劣化診断技術(その1)-固有振動数の日変動メカニズムの解明と構造部材試験による基本原理の創出-

タイトル(英文)

Early deterioration inspection of concrete-made structure based on natural frequency dependent on thermal loads (Part.I Fundamental principal of inspection)

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

鉄筋コンクリート造建築物の固有振動数には、構造部材の温度と相関する日変動が含まれることが知られている。仮に、固有振動数の日変動の発生メカニズムが構造部材の温度荷重に依存する現象であるならば、構造部材に発生する温度応力は構造損傷によってその特徴が変化することが容易に予想されるため、このメカニズムを応用した鉄筋コンクリート構造の新しい早期劣化診断技術の開発に発展する可能性がある。本研究では、無筋コンクリート試験柱と鉄筋コンクリート試験柱を対象として,固有振動数の日変動メカニズムの再現実験を実施するとともに,このメカニズムをコンクリート構造の健全性診断技術に応用するための基礎的なデータを収集した。本研究の主要な知見は以下のようにまとめられる。(1)構造的に健全な無筋コンクリート試験柱の側面温度を変化させたときの固有振動数の変動パターンを測定した結果,側面温度の上昇とともに固有振動数が高くなり,側面温度の低下とともに固有振動数が低くなる現象が明瞭に確認された。鉄筋コンクリート試験柱の場合には,側面温度の変動に伴う温度変動は小さいものの,固有振動数と側面温度の関係については同様の傾向が認められた。以上の実験結果は,筆者らが実建物で観測してきた固有振動数の日変動と整合するものであり,温度応力によって固有振動数に日変動が現れる仮説を支持するデータが得られた。(2)鉄筋コンクリート試験柱の破壊載荷後に加熱試験を実施し,試験柱への損傷と温度荷重による固有振動数の変動パターンの関係を調べた。その結果,損傷時には温度荷重を作用させた直後に固有振動数は低下する傾向が観察され,健全時とは異なる変動パターンとなることを明らかにした。また,載荷直後と一年後の試験データを比較した結果,温度荷重に依存した固有振動数の変動パターンは時間が経過しても保持されることを確認した。(3)試験柱の加熱試験および破壊試験の実験データに基づき,コンクリート系構造物の固有振動数に日変動が現れるメカニズムについて考察した。結果として,固有振動数の日変動メカニズムはコンクリート材料の温度応力に依存したものであること,健全時には温度応力による固有振動数の上昇メカニズムと部材温度の上昇に伴う材料の軟化効果が複合して発生すること,構造損傷時には温度応力による固有振動数の上昇メカニズムが失われることなどの知見を得た。(4)本報告での実験方法と固有振動数の変動メカニズムを応用することで鉄筋コンクリート構造部材の鉄筋比の測定やコンクリートの損傷度の診断などが原理的に実現可能であり,現在の診断法よりも優れた特長を有することを述べた。

概要 (英文)

A novel structural diagnosis method for reinforced concrete members is proposed to detect concrete cracks and to evaluate the amount of reinforcing steel. In the proposed method, natural frequency of the concrete member is monitored under thermal load, and then the soundness of the member is diagnosed from the wave profile of the monitored natural frequency transition. The principal of the method lies in that the natural frequency transition of a concrete member differs by the thermal stress distribution in the member section, and that the thermal stress distribution also differs by the occurrence of the concrete crack or the amount of reinforcing steel. The main advantage of the proposed method is that it is suitable for wide application, such as for structural members whose surface is invisible, or whose prior records before defects cannot be obtained.
Scaled model tests are conducted to prove the principal of the proposed diagnosis method for a plain concrete column and a reinforced concrete column. The first natural frequencies of the columns are measured continuously while one side of each column is gradually heated. And such monitoring tests are conducted under three damage levels. As a result, the natural frequency transitions after heating indicate different wave patterns between non-damaged and damaged cases or between plane concrete and reinforced concrete. From these experimental facts the basic principal of the proposed diagnosis method are demonstrated.

報告書年度

2006

発行年月

2007/04

報告者

担当氏名所属

金澤 健司

地球工学研究所 地震工学領域

キーワード

和文英文
構造ヘルスモニタリング strucutal health monitoring
鉄筋コンクリート構造 reinforced concrete structure
固有振動数 natural frequency
温度荷重 thermal load
常時微動 ambient vibration
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