電力中央研究所

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電力中央研究所 報告書(電力中央研究所報告)

報告書データベース 詳細情報


報告書番号

V08004

タイトル(和文)

海洋物質循環モデルにおける鉄供給過程の改良ー西部北太平洋亜寒帯域の鉄濃度分布へのオホーツク海からの鉄供給の影響ー

タイトル(英文)

An improvement of iron supply process in a marine biogeochemical cycle model: effects of iron export from the Sea of Okhotsk on the iron concentrations in the Western Subarctic North Pacific

概要 (図表や脚注は「報告書全文」に掲載しております)

オホーツク海の陸棚堆積物を起源とし、中層循環を経て太平洋へ輸送される鉄が西部北太平洋亜寒帯域の主要な鉄の供給源であるか、数値実験により調べた。鉄の供給過程を変えた数値実験の結果と観測データに見られる特徴と比較し、鉄の供給過程を考察した。観測データから、北太平洋亜寒帯域の溶存鉄濃度分布には次の2つの特徴があることを確認した。(1)西部、東部とも表層で濃度が低く(~ 0.1 nmol/L)、深層で濃度が高い。(2)深層では、東部で0.6 nmol/L、西部で0.9 nmol/L程度であり西部で濃度が高い。水平解像度約3度のモデルを用い、3ケースの実験を行った。CTLケースでは海洋表層からダストによる鉄供給のみを与えた。OKHケースではそれに加えてオホーツク海中層からの鉄供給を与え、西部へ供給される総量がダスト由来のみで供給される場合の3倍、10倍、30倍になるようにした。DSTケースでは、ダストによる鉄供給のみを与え、西部で10倍に強めて与えた。CTLケースでは西部深層の濃度が観測値より低く、西部の供給量が過小評価されていることが分かった。DSTケースでは表層の濃度が過大評価になり、ダスト以外の供給過程がこの海域の濃度分布を特徴づけていることが分かった。OKHケースでは観測値の特徴が再現され、オホーツク海中層からの鉄供給が西部北太平洋亜寒帯の海域スケールの鉄濃度分布に影響を与えていることが示唆された。OKHケースについて、3倍、10倍、30倍で与えた結果を比較すると、10倍の結果がよく一致し、中層から供給される鉄の量はダストにより供給される量より1オーダー程度大きいと見積もられた。

概要 (英文)

Aeolian dust deposition has been considered as a major iron source. Recent observational studies have suggested that the Sea of Okhotsk exports a significant amount of iron to the Western Subarctic North Pacific (WSNP) through intermediate water, which is probably another major iron source to the WSNP. This study examines effects of iron export from the Sea of Okhotsk on dissolved iron concentration distributions in the WSNP by numerical simulation. We estimated features of dissolved iron concentrations in the WSNP from observational data. The results show the concentrations of about 0.1 nmol/L in the surface and about 0.9 nmol/L in the deep water. The high concentrations in the deep water suggest high iron supply in this region. Three cases of numerical experiment are conducted with different iron supplies to the WSNP. A case considering the iron supply from the Sea of Okhotsk generally reproduces the observed features, while cases only considering aeolian dust cannot reproduce them. Sensitivity experiments on the amount of iron export from the Sea of Okhotsk reveal that the iron flux is an order of 5x10^8 mol/yr, and about one-order higher than iron supplied by aeolian dust in this region. These results support that the Sea of Okhotsk is a major iron source to the WSNP.

報告書年度

2008

発行年月

2008/11

報告者

担当氏名所属

三角 和弘

環境科学研究所 物理環境領域

津旨 大輔

企画グループ

西岡 純

北海道大学 低温科学研究所

Frank O. Bryan

米国大気研究センター

Keith Lindsay

米国大気研究センター

Scott C. Doney

ウッズホール海洋研究所

キーワード

和文英文
海洋大循環モデル Ocean General Circulation Model
海洋物質循環モデル Marine biogeochemical cycle model
鉄供給過程 Iron supply process
北太平洋亜寒帯 Subarctic North Pacific
オホーツク海 Sea of Okhotsk
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