基本文書「Biological and Epidemiological Information on Health Risks Attributable to Ionising Radiation: A Summary of Judgements for the Purposes of Radiological Protection of Humans(電離放射線に起因する健康リスクについての生物学的および疫学的知見)」 に対する当センターのコメント
  • LNT(しきい値なし直線影響)仮説に関する議論について: 放射線防護の目的のためにLNT仮説を適用することを明言していることは評価できるが、一般公衆の放射線に関する不安を取り除く観点からは、仮説の採用を「科学的」でなく「現実的」とすべきである。
  • 皮膚と目の線量限度に等価線量(Sv)を用いるか、放射線加重線量(Gy)を用いるかが議論され、等価線量の使用が推奨されているが、線量の呼称について混乱があるように見える。
  • 従来の「確定的影響」に代えて「組織反応」という語が提唱されているが、「確率的影響」の対語として「組織反応」はバランスが悪い。
  • ヒトのリスクを推定するにあたっての疫学的情報源について: 疫学的情報源として広島・長崎のデータを第一に挙げ、次いで医療被ばく・職業被ばくおよび高レベル放射線環境被ばくを挙げていることは評価できるが、高自然放射線地域住民の健康影響調査についての取り上げ方が不十分である。
  • 組織荷重係数の変更: 生殖腺が0.2から0.08に、乳房が0.05から0.08に修正されているが、今回変更が加えられたことについての説得力のある説明が必要である。
  • 遺伝的影響について: これまでにヒトにおいて遺伝的影響が検出されていない状況のもとで、ヒトのバックグラウンドとマウス等の実験に基づく「倍加線量」からリスク推定を行なうことは、他の影響について「現実には問題とならない」と結論づけている姿勢と相反する。
  • まとめの表について: 従来の勧告からの変更された点についても記載できればより有用である。