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電気新聞 ゼミナール

ゼミナール (159)

低炭素社会実現に向けてFIT終了後の住宅用PVを
どのように活用していくべきか?

【 「ポストFIT」における住宅用PV】

 2019年以降、FIT買取期間が終了し、法律に基づく買取義務が消滅した住宅用PVが大量に発生する。2019年度のFIT終了後PV容量は300万kWに達する。政府は、 FIT買取期間が終了した(投資回収が済んだ)再生可能エネ電源の利活用モデルとして、 自家消費を中心とした需要側での活用、売電を中心とした供給側での活用を想定している。
 電力中央研究所では、経済合理的、かつ低炭素社会実現に資するFIT終了後の住宅用PV活用のあり方を検討している。

【海外におけるポストFIT対策事例】

 FIT制度によりPVが大量導入した海外の一部の電力市場では、FIT終了後の住宅用PVを対象にした実証事業やビジネスが始まっている。電力価格の高騰とFIT買取価格の低下によりPV電力の自家消費が経済的となっている豪州で、電力会社AGL社は、2018年内に1千件の住宅用蓄電池を設置し、これらを制御する世界最大級のVPP実証を行い、蓄電池をPV電力の自家消費だけでなく、卸電力供給や系統安定化に活用できるかを検証する計画である。ドイツ電力会社E.ON社は、PV余剰電力を蓄電池に貯蔵するだけでなく、系統に受け入れた上で、同量を需要家が好きな時間帯に利用できる(すなわち「バーチャル蓄電」)家庭用プロシューマーサービスを開始した。

【オール電化+需要能動化による活用】

 本稿では、表に示す4つのポストFITユースケース①〜④を取り上げ、住宅用PVの活用策の違いが、需要家側のトータルコスト(エネルギーコストと設備コストを含む)、CO2排出量、送配電部門の託送収入へ与える影響を評価した結果を紹介する。評価対象は、ある仮想的な住宅エリア(約1300戸、PV設置住宅の戸数割合60%)であり、FIT終了前のPV設置住宅の給湯熱源は都市ガス給湯器を想定した。
 評価結果によれば、蓄電池を導入せず、FIT終了後もPV余剰電力を小売事業者(アグリゲーター含む、以下同様)へ全量売電し続けるケース①が、最も需要家側のコスト負担が低い。
 需要家側への大容量蓄電池導入によってPV余剰電力の自家消費を推進するケース②では、充放電ロスによるCO2排出増加、大容量蓄電池導入による需要家側コスト増加、託送収入の減少をもたらす(なお、蓄電池価格は政府目標9万円/kWhを仮定した)。小容量蓄電池を導入、系統需給状況に応じて蓄電池を制御するケース③は、ケース②よりも需要家側コストとCO2排出量の増加を抑制できる。
 ケース④は、オール電化に加えて「需要能動化」、すなわち小容量蓄電池とHEMSを導入し、小売事業者が需要家機器を遠隔で制御しつつ、PV余剰電力の効率的な自家消費を推進する。需要家側コスト増の抑制、託送収入維持等の点からバランスが取れていることに加えて、CO2排出量抑制に大きく資する。これは、ヒートポンプ給湯機のPV余剰電力を用いた蓄熱運転の効果である。
 低炭素社会の実現に向けたポストFIT期の住宅用PVの合理的な活用策として、その社会実装のあり方も含め、検討を深めていきたい。

電力中央研究所 社会経済研究所 エネルギーシステム分析領域 上席研究員
高橋 雅仁/たかはし まさひと
1995年入所。専門分野は、エネルギーシステム分析、エネルギー需要分析。
博士(工学)。

表

電気新聞2018年7月11日掲載

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