社経研DP

2015.04.20

再生可能エネルギー発電の大量導入時の発電費用の評価

  • 再生可能エネルギー

SERC Discussion Paper 15002

山本 博巳   矢部 邦明  

要約

2015年4月現在、総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 長期エネルギー需給見通し小委員会でエネルギーミックスが検討されており、CO2を排出しない再生可能エネルギー発電(再エネ発電)と原子力発電の比率が論点の一つになっている。本報告では、再エネ発電と原子力発電の比率を変化させ、2030年の発電費用への影響を評価する。評価には、太陽光発電等の大量導入時のLFC(負荷周波数調整)確保や火力電源・蓄電の運転モードを考慮して、全国大で2030年の1年1時間毎の電力需給に対する電源の構成と運転を分析するモデルを用いる。  
数値分析の結果、再エネ発電比率が上昇すると、再エネ発電費用、および再エネ発電の需給調整のため、再エネ発電を含む平均発電単価が上昇する。太陽光発電・風力発電をゼロと仮定した再エネ発電比率13%の平均発電単価9.4円/kWh(2010年実質値)を基準とすると、再エネ発電比率21%のとき1.2倍、30%のとき1.4~1.6倍、40%のとき1.7~2.3倍になる。特に、再エネ発電の抑制をできる限り避けるように設備の建設と運転を行うケースでは、蓄電池費用が大きくなり、発電単価が高くなる。一方、経済性を考慮した再エネ発電の抑制を可能として、設備の建設と運転を行うケースでは、平均発電単価の幅の下限値をとるが、再エネ発電の抑制率が高くなる。再エネ発電を除いた発電単価(火力発電・原子力発電・蓄電の平均単価)も、再エネ発電の調整費用のため、再エネ発電比率の上昇に伴い上昇する。その発電単価は、基準価格(再エネ発電比率13%)に対して、再エネ発電比率30%のとき1.1~1.4倍、再エネ発電40%のとき1.3~2.4倍へ上昇する。ただし、本稿で示す結果は、発電システムを対象としたモデル分析結果であり、系統制約を考慮していない。現実には、系統対策を実施するならさらに費用がかかり、系統対策が不十分なら再エネ発電の抑制率が増加することに留意が必要である。

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