経済社会研究所

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No.43 論文要旨

自由化時代における公共サービス義務−誰がラストリゾート供給者となるか− (435 KB)

Public Service Obligation in Liberalized Electricity Markets
− Who is the Provider of Last Resort? −

[キーワード]
小売自由化、供給義務、ラストリゾート、アメリカ合衆国

丸山 真弘

電力は、現代社会に不可欠の財であり、ユニバーサル・サービスの確保が求められている。従来既存の電気事業者に供給義務を課すことによりユニバーサル・サービスは確保されてきたが、電気事業の制度改革が小売部門の自由化にまで及ぶことにより、従来と同様の供給義務を電力供給サービスに対して課すことはできなくなっている。
このような状況においても、引き続きユニバーサル・サービスを確保するため、他から電力供給を受けることのできない需要家に対する供給を特定の供給者(ラスト・リゾート供給者)に義務づけるという方法が考えられている。
本報告では、誰がラストリゾート供給者となるべきかという点について、米国の事例を中心に検討を行う。

電力供給地域にあわせた全国10地域間産業連関表の開発 (842 KB)

On the estimation of 10 power-supply region inter
− regional input-output table: 1990 -

[キーワード]
地域経済、地域間産業連関、空間相互依存モデル、電気事業

人見 和美

地域経済分析の基礎的な道具である地域間産業連関表は、地域間・産業間の取引を詳細に記述したものである。したがって、地域間の相互依存を明示的に考慮した分析が可能であり、連関表の地域区分を分析対象としている地域に合致させることができれば、経済分析の道具として実用的かつ強力なツールとなる。
本稿では、通産省が公表している全国9地域間産業連関表を基礎に、その地域区分を電力会社の電力供給地域に可能な限り整合するように再編成し、それらの地域間取引を部門別に推計することによって、新たに全国10地域間産業連関表を開発している。同表では、北陸など電力会社に対応した地域区分が設けられるとともに、通産省の区分では集計され単一地域として扱われる関東地域が北関東と首都圏に分割されることによって、地域間フィードバックによる生産誘発では、農林水産あるいは製造業各部門が主体となる他地域に比べて首都圏では対事業所サービスが重要な位置を占めることが明らかにされている。

中国における家計貯蓄行動の実証分析 (769 KB)

An empirical Analysis of Household Savings and Aging
- A Case Study of China -

[キーワード]
家計貯蓄、人口高齢化、ライフサイクル仮説、中国経済、パネル分析

若林 雅代

中国の家計貯蓄は国内貯蓄のおよそ半分を占め、企業の投資と経済の高成長を支えてきた。中国では政府が押し進めた「一人っ子政策」の影響で人口構造の高齢化が急速に進み、高齢人口の増加と若年人口の減少によって近い将来に未曾有の高齢社会が到来する。国連の人口予測によれば、中国の生産年齢人口は2025年頃をピークに減少するとみられている。
この政策によって、家計の貯蓄率を低下させ、将来的な成長を損なうというツケ(機会コスト)が発生することが懸念される。
本稿では、30地域、3ヶ年のパネルデータを用いて貯蓄関数を計測し、推定結果に基づいて中国における家計の貯蓄行動と人口構造変化の影響を分析する。

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